MoeMiura

ハッピーアワーのMoeMiuraのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
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聴くことを描いた映画だと思う。

ストーリーは4人の女性たちを軸に進んでいく。それぞれが誰かを聴かなかったり、誰かに聴いてもらえなかったりしたことが亀裂をうむ。小さなことの積み重ねが気がついたら大きなひびになっていた。
4人それぞれのことにおいてもそうだし、4人の間でもそうだ。

タイトルにある「ハッピー」は人それぞれ違う。相手に耳を傾けることでしかその人の幸せを知ることはできないのかもしれない。長く一緒にいると、相手と向き合うことを忘れがちだけど、いつのまにか埋められない溝が生まれているのかもしれない。

とにかく登場人物の顔を真正面から捉えた画が多い。とくに聴き手の。
聴くことについてのワークショップからできたという前知識があったからかもしれないが、聴くことに重点を置いていると感じた。
顔を真正面から捉える撮り方や、質問する人、答える人にはっきりと別れた構成などインタビューみたいと感じる点があった。

この映画にはわずかだが震災というキーワードが存在する。ハッピーアワーの前に3.11のドキュメンタリー3作を撮られていた濱口監督にとって、やはり大きな意味をもつワードなのだろう。
最新作「寝ても覚めても」でも震災が登場すると聞き、監督の中でまだなにか描き切れていないものがあるのだろうと推測している。ハッピーアワーを観て、監督は答えの出ない問いを3.11に関して投げかけ続けているのではないかと考えた。それは劇中のワークショップ、重心に聞く、がきっかけだ。この中でははらわた聞く、というパートもあって、どちらもはっきりとした返答が返ってくるわけではない。ただ耳を傾けることに意味がある。
これが濱口監督の3.11に対する態度に共鳴しているように感じた。

終盤の朗読で冒頭のロープウェイのシーンを彷彿とさせる。とても美しい構成だと思う。
MoeMiura

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