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パッセンジャーのこーたのレビュー・感想・評価

パッセンジャー(2016年製作の映画)
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ツッコミどころ満載の珍映画だったが、ヒロインであるオーロラの美しさが命綱となって、なんとか最後まで興味を保つことができた。彼女の、狂気に満ち満ちた葛藤が素晴らしい。
ジェニファー・ローレンスはやっぱり巧いね。
物語の中盤、ミッドポイントに相当する箇所で、主人公が顛倒する場面なんてまさに鳥肌もので、この映画唯一の(笑)見どころといっていい。物語の真の主人公は、ジムではなくオーロラなのだよ! (だからこそ、彼女の葛藤が後半うやむやになって、ちゃんと決着しないあたりは若干の物足りなさが残る) 。

舞台設定には多々疑問がある。あの宇宙船は、故障が起きたときの危機管理があまあまだし、その故障が絶対に起こりえないというなら、目覚めているひとがいるはずのない地点でアナウンスやディスプレイが流れたり、クルーが厳重に隔離されていたり、といったことの説明がつかない。ジムも美女を起こすまえに、対処可能な人間を探すべきだし(現に存在する)、それを考えないのは奇妙というほかない。などなどなど。
物語というのは、状況をたくさん説明しようとすればするほど、かえって安っぽくチグハグになってしまうのだな。広げた風呂敷をキレイにたたもうと意識するあまり、焦点がぼやけてしまっている。

半世紀以上むかしに書かれた(もはや古典といっていい)『ソラリス』というSF小説も、宇宙ステーションで孤独に陥る男の物語だった。その小説の主人公ケルヴィンのまえにも美女が現れるが、その状況でかれは、自らの気がふれたのではないか、これは夢や幻想なのでは?という疑いを持つ。そしてこの疑惑を晴らすのは、じつはけっこう難しいのだ。
ひょっとするとわたしたちの人生も、夢や幻覚、あるいは別のだれかに見られている「映画の中」のような物語を生きているのかもしれないな。なんてことを思ったりもした。
(さいご映画と関係なくなったー笑