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ちはやふる 下の句のmOjakoのネタバレレビュー・内容・結末

ちはやふる 下の句(2016年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

上の句が思った以上に良く出来た青春映画だったのでもちろん下の句も観てきましたよ。既に彼らのことを好きになってるので細かいことは気にならなかったです。

やっぱりクオリティの面では上の句には及ばないのかなというのが正直なあたり。というのも上の句で青春映画としての美味しいツボはあらかた押さえていたからじゃないかと。すずちゃんの魅力が爆発してたちはやを中心として太一の成長物語や机くんがカルタを通じて人との関わりの尊さに気づくまでもが描かれ、最後には負け犬たちが勝ち上がっていくという王道の燃える展開だった訳です。もちろん作り手にも下の句を作る上での戦略はあって、上の句でまだ語られていない主役であるちはやが仲間との絆を再確認し成長する話をいよいよメインにしようと。ただ上の句で既に彼らがチームになってるのを観てる我々にとってまたちはやがトンチンカンな個人プレイで仲間に迷惑かけ始める序盤はかなりイライラするし、それに伴ってこれは上の句でも気になったマンガ的なギャグや台詞回しもかなり鬱陶しく感じました。クイーンを倒すことが新の為になるというのもよくわかんない理屈だし、上の句のように試合シーンでの燃える展開が少なめなのも若干トーンダウンした印象を受けるのも否めない。結局今日本映画界の流行である前後編に分けるというやり方自体間違ってるってことじゃないかなぁと。正直映画会社の興行的な思惑しか感じられないし、これが「ちはやふる2」という打ち出しなら感じ方も変わったんじゃないかなと思う訳です。

ただ観終わってみればやっぱり好印象で、トーンダウンと言いましたがそれは作り手の意図した部分でもあると思ってて。まさしく静と動のコントラストが印象的な競技カルタと同じように、上の句が熱を帯びた成長譚なら下の句は静けさの中から仲間との絆という所に着地しようとしたんじゃないかと。若いキャスト陣それぞれの魅力と青春映画ならではのアンサンブルも上の句に引き続き素晴らしい。全編に渡って彼らの作るいい雰囲気があることで"仲間"というテーマが際立つし、それがカルタ部でいるこの一瞬だけのものであるというとこも青春映画として絶対に欠かせないあたり。そして何より上の句にもなかった今作最大の魅力はちはやのライバルである若宮詩暢を演じる松岡茉優でしょう。天然素材としての魅力を持つ広瀬すずとはまた別の女優としてのオーラやカリスマ性があって、それでいて原作のモチーフやコメディ要素を崩すこともなく共存してる訳で誰もが印象に残るキャラクターだったんじゃないでしょうか。ちはやとの最後の勝負も良くて勝敗じゃなく何かが好きだという気持ちにこそ価値があるという結論も僕はすごく好きでした。

エンドロールに流れる和柄のアートデザインも非常に凝ってて良かった。続編も決まってこれ以上どう話を転がすのか若干心配もありますが、また彼らに会えるのは素直に嬉しいですよね。今年の邦画を代表する作品なのは間違いないでしょうし、それぞれの役者さんが今後どんな作品に出て成長していくのかも楽しみです。
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