6トン将軍

ペットの6トン将軍のレビュー・感想・評価

ペット(2016年製作の映画)
3.3
「ハリウッドアニメもついに「かわいい」を意識し始めた」
「癒し系アニメ」
「完全にポスターミス」

ポスターは何故かキャラの顔が見えません。
ポメラリアンや地下組織の白兎かわいいので、顔を出したほうがいい気がします。
パッケージ&予告編と、映画を見た印象が結構違います。
いつものアメリカっぽい動物キャラかと思ったら、今回は日本漫画のキャラデザに近いので。顔見せたほうがいいと思いました。

やっぱり、3DCGアニメは映像がきれい。
この会社の作品は「ミニオンズ」もそうだけど、3DCGの長所を活かすのがうまい。
3DCGならではの立体感ある動きと、色鮮やかな炎色の色、自由度の高いカメラワーク。
これは2Dアニメだと不可能だし、実写映画でもできない。

■印象シーン
・opのNY紹介シーン。
「自由の女神→橋→ビル→セントラルパーク」と、
カットの切り替えなく一連の長回しで2分ぐらい映像を見せる。
センスあります。
鳥になったようなカメラワークに、海の青さの綺麗さ。
ビルや公園も色とりどりでNYが綺麗な街に見える。
ここぞとばかりに3DCGの立体感&カメラワーク&原色の色を見せてくる技術力。
強みが分かってるスタジオ。

・路地裏での立体シーン
ごみバケツの中に入って空に打ち上げられる→リードもたれて空中で投げ飛ばされる
→空中で上下でキャッチボールされる→洗濯物にくるまれてつるされる→切られて下に落ちる

・白いタンスをポメラリアンが上るシーン。
たんすの中に入って、本押し載せたりして上っていく。
白い部屋に白い犬が映えたってのもある。
姿は見えないけど上っているのが分かる想像力がいいのかも。

・ポメラリアンが地下のスノーボールまで会いに行くシーン
屋上から窓拭き用昇降機で降りる→TSの巨大画面の前を通る→
鳥に運ばれて部屋へ→工事の木材クレーンにのってビル移動→
ダストボックスで一気に地上に移動
この立体感。

■よかった点
・「かわいい系」の、日本人向けキャラデザ
日本漫画のように、目が大きく幼い顔立ちの動物たち。
「かわいい」重視です。
アナ雪みたいです。
これまでハリウッドアニメは、リアリティ重視の若干キモイキャラデザだったけどこの作品は違います。
「人参持った白うさぎ」「ヒロインの白猫」「路地裏のギャング子猫」等々、かわいい表情のできはすごい。
まぁ、顔とのギャップで性格がひん曲がってるキャラだったりするけど。

・動物の動き
デフォルメされた動物(足が超小さい、目が大きい)が、実際の動物がやる「かわいい」動きをやる。
youtbeとかで見た「かわいい子猫」や子犬の動きをやってくれます。
漫画的な記号的な動き(目が×)などではなく、実際の動きに近い写実的な動き。
よく再現されていて和みます。

・立体的な動き
ビルの路地で、猫たちにフルボッコにされるシーン。
ビル間の洗濯物を使った上下間ある動き。
立体感~。
NYの街を地下から屋上まで動くのは躍動感あります。

・動きのアイデア豊富
ミニオンズの時も感じたけど、細かいアイデアをかなりの量放り込んでくる。
家でご主人様を待つシーンでも、一匹につき3,4子も動きのアイデアシーンを重ねてくる。

■悪い点
・まとまりがない
これは「ミニオンズ」でも感じました。
日本のジブリとは違い、作家性や独特の世界観はないけど、万人が楽しめる作品。
多くの人が意見を出した、合議制でできた作品だと思います。
多くの人が共感できるアイデアをつめこんだ感じ。
シーンごとに、担当者が違うような作品です。
感性が違うのかな。違う漫画が差し込まれた感じ。
そのため、ぶつきり感があってちょっとストレス。
途中で飽きてくる。

・CGの出来は「ズートピア」に劣る。
動物のふわふわとした毛並みなど、質感やCG技術の部分ではディズニーに劣ります。
3DCGの細かな演出や「感触」のある映像はディズニーが世界一でしょう。
しかしこっちの作品は、強みの見せ方が上手いです。
技術はなくても効率がいいです。

・人物リアリティ
悪役的な役割を果たす犬や、野良白うさぎ(スノーボール)がちょっとガチ目で性格悪いのでイラっとします。
「実際にいそうな性格の悪い人」を説得力ある感じで出すんですね。
しかし、見た目がかわいかったり、アメリカンジョークで処理されるのでイラットは消化されますが。

なんでしょう。かわいい子が、かわいさを武器にわがままするアレです。
なんだか説得力あるんです。小学生ぐらいに本当にいそうな感じ。

ディズニーみたいに全編「楽観的な希望主義」で、悪役を含めて皆陽気ではなく、
ちょっとピクサーっぽい暗さというか、真面目さがあります。

・見せ場がない
映像やアイデアや動きの平均レベルは高いです。
しかし、とくに何もなく終わります。
ディズニー的な「ミュージカル」や戦闘場面などの、見せ場がほしいところです。
何度も見たくなる具体的な「シーン」や気持ちが「上がる」シーンがないです。
繰り返しは見たくない感じ。
次回策の「シング」ではその点改善されているようでよかった。

アイデアの数も多いし、動物の動作も細かい。
でもワクワクしないというか、満足感が低い。
ここでの評価が低い理由も以下だと思う。

・実写演出の置き換えで既視感
「ドリー」の時もそうだったけど、
ハリウッド映画の実写演出を動物CGに置き換えたシーンが多いので既視感。
最後のバスが海に落ちるシーンなど。

人間が出来る動作ではなく、動物ならではの演出が見たかったな。
それに3DCGよりも、やっぱり実写映像の方が迫力がある。
同じシーンなら人間が演じてた方が納得度も共感もあるし、面白い。

・ひとつの作品ではなくアイデア集。
youtubeの5分動画を連続で見せられている感じかな。
間や緩急がなくドドドーっと押し寄せてくる。
インコが扇風機のリモコンとTVをつける。ゲームの戦闘機の画面の前で飛ぶ。
こういった細かなシーンが多いし、アイデアは面白い。
階段の上り方も動物によって変えてくるし。

でもシーンに、作品としての統一感がないからストレス。
多分、多くの人が出したアイデアを、一人の頭の中で統合しないで入れているからだと思う。
というか3DCGだと全部を一人の感性で統合しにくいんだと思う。
作家性の強いジブリの宮崎作品に慣れていると、結構気になる。

・映像が気持ちよくない
ジブリの宮崎作品の「動き」の方が見ていて気持ちがいい。
やっぱりアニメの場合、実写に近い動きより、感性で変更した動きのほうがいい。
3DCGならアナ雪の方が気持ちがいい。
毛並みや布の質感などにこっているから。

■まとめ
やはりハリウッドアニメは面白いです。
年々技術力が上がって「見せ方」を変えてきます。
ワンシーンごとに演出がつまっており、なんだかんだ新しい映像を見せてくれる。

アニメは、ジブリとハリウッドアニメですね。
他のアニメとはレベルが違う。
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