まっつん

スパイダーマン:ホームカミングのまっつんのレビュー・感想・評価

4.1
MCUによるスパイダーマンリブートの一作目。もう2回目であり、しかもかなりの短期間でのリブートとなっています。

やはりリブートという作り自体の欠点として「同じ話を何回も見せられることになる」という部分がありますね。特に一作目はすでに分かりきっているヒーロー誕生譚をまた見せられることになって、こちらとしては「もう知ってるよ」ってなりやすいわけです。しかもことスパイダーマンに関してはアメイジングの時すら「もうリブートするの?!」感があったのにそれよりも短期間でのリブート!これは危険ですぞ〜笑。そのような危惧を抱いていたわけであります。

しかし本作はその点を非常にスマートに解決しつつ全く新しいスパイダーマン誕生譚になっていました。まずスパイダーマンといえばベンおじさん問題ですよ。サムライミ版でもアメイジングでも見たベンおじさんの下りを今回は思い切ってバッサリ切っていますね。スパイダーマンにとってベンおじさんの下りはパワーを私利私欲や自分勝手な動機で使わないための自分自身に課した枷の役割を果たしていると言っていいと思います。そこで本作でベンおじさんの代わりを務めるのはアイアンマンことトニースタークとヴィランであるヴァルチャーになります。彼らとの関わりによって自分自身にヒーローとしての枷を課していく話になっていると思います。

またヒーローとしてだけではなく人間としての成長が描かれているのも特筆すべき点だと思います。ヴァルチャーとの戦いを通じて、最終的にトニーから迫られる選択に対しヴァルチャーの主張も飲み込んだ返答を出来るようになるという成長が描かれていました。

そしてヒーローとして、人間としての成長を同時に描くためか今回のスパイダーマンは非常に「幼い」わけです。サムライミ版やアメイジングと比べてもとても幼い。青年と言うよりかは少年だとも言えます。そこに今回の監督、ジョンワッツの作家性が強く出ていると思いました。「クラウン」や「コップカー」などで一貫して描いている「少年がガチで怖い目にあって成長する」映画に本作もなっています。本作で言えばあの車の中のシーン。マイケルキートンが醸し出すあの「大人の怖さ」たるや!さすがマイケルキートン!

映画全体のテイストとしてはやはりウジウジした役になりやすいピーターパーカーをトムホランドがカラッと明るく演じたことで過去のスパイダーマン映画よりも数段風通しの良い作品になっていると思います。またラモーンズが流れるような作りも「ガーディアンズオブギャラクシー」以降の作りを強く意識させます。

他方残念な部分も少なからずありまして、そこはヴァルチャー周りの描写です。ヴァルチャーって要はアイアンマンの暗黒面なんですよね。彼はトニースタークへの怒りや、「社会階級的に上の者は下の者のことなんか何も考えちゃいないじゃないか!」っていう怒りが動機になっている訳です(その割には彼自身の葛藤があまり描かれていないのも問題だとは思いますが。これだとただ単に居直ってるだけにも見えてしまう。)その怒りをトニースタークが全く理解しないまま終わってしまった点が非常に残念だなと。非常にモヤモヤを残す部分であると思います。確かに社長ひとりに背負わせすぎな部分もありますがMCU自体がトニースタークから始まった罪と罰の物語とも言えるます。そこは受け止めて欲しかったかなと。

これはこの作品単体ではなくMCU全体に言えることなんですけど正直ここまで大規模なユニバース化が進むとちょっと疲れるかなっていう笑。またドラマ化の一途を辿っているという点で「映画である必要あるのかな?」とも思い始めてくるんですけど、プラウラーことアーロンデイビスが登場していたり、となるとマイルスモラレスも出てくるのかな?と思ったりいちいちワクワクしてしまう訳です。どうすればいいんだ笑。