マクガフィン

ザ・サークルのマクガフィンのレビュー・感想・評価

ザ・サークル(2017年製作の映画)
2.8
巨大なSNSがもたらす脅威を描くサスペンス映画。

昨今、AIの脅威や可能性とその対策が取り扱う映画やニュースが多いなか、SNSをテーマに扱うことが逆に新鮮。
作中に次々に寄せられるSNSのコメントは全部が読めないように記号化されることで、処理できない膨大な情報量を表すことが印象的に。

テクノロジーの進化とプライバシーと監視社会の問題や、大企業による独占が社会を支配していくことの未来に対して客観性を重視した問いかける演出は、深く掘り下げずにリアリティが希薄になり、問題の表面だけをなぞったような上辺感は警鐘になりえない。

ジョブズを意識したCEOのトム・ハンクスは、聞き手を誘導する細部まで気を配ったシンプルなプレゼンは、もはやユートピア論にしか聞こえなく、カルト新興宗教を彷彿し、理想主義につけ込んだ洗脳と人間の同調圧力の怖さが伝わる。

主演2人の演技は良いのだがキャラ造形にも問題があり、トム・ハンクスはキャラ設定が中途半端で、心の闇や悪い野心が足りなく近年亡くなった人への配慮が垣間見れる。
また、エマ・ワトソンは環境や出来事により短期間で極端に自我が右往左往し、世界をより良くしたいという理想主義者に変貌する説得力が足りない。

一番の問題は、映画の脚本がおかしく、映画の問題定義と内容がずれていることである。
近未来図を描いているのが、ほぼタイムリーな問題。ネット社会の負の側面の問題をシンプルに問いかけるが現実はより問題が複雑化している。テクノロジーに関する様々な社会危機に触れてはいるが、教訓になっていない。監視社会の中での自由に対する大きな問いかけをしているが最終的に観衆が判断する。
SNSというよりIoTが引き起こすありとあらゆるモノがインターネットに接続する世界の問題の方が適切な気がする。

結局、発信する側の透明性と受信する側の認識による両方のバランスが大事な普遍的な問題に集約する。