アランスミシー

ハイエナのアランスミシーのレビュー・感想・評価

ハイエナ(2014年製作の映画)
5.0
これが意外とすごいんだなぁ

とりあえず、偏見を持つな。
そしてバカになって見てみな。
何を言ってんのかわかるから。


ポップコーンムービーしか観たことないようなお方のコメント見て、かなりハードル下げて見てたら、出だし本当につまらない、たんたんとしたシーンが続いてもう映画館を出てやろうかと思ったんだ。

でもよく考えるとそれは偏見でしかない。
バカになって見ることにした。

終わって見て、思ったんだ。もしかしたらこれはシッチェス映画祭ファンタスティック部門最優秀作品なのかもしれない。

本能がそう言ってるんだからこれはすごい映画なんだ。
じゃなかったら、これだけ素晴らしい映画たちに満たされた2014年ファンタスティック部門に残るはずが無いんだよね。

この映画、音が本当にすごいんだ。狙ったのかたまたまなのか知らないけど、本当にすごい。

こんな音響の使い方なかなか観ない。
全編統一されて、音が最小限に抑えられ、音楽もかなり抑えられ、さらにある一定の音域に限ってるために、なんだか無気力というか喪失感というかに襲われるんだ。
そして、後半に連れてだんだんと音楽が心臓をやるせないような、上映中動き出したくなるくらいに掻き立ててくる。
前半のムカムカするほどの平坦さは後半の緊張を最大限に引き出していたんだ。

波が常にあるのがいい映画とは言えない。
この映画は全体を通して一つの山を構成している。
いや崖なのかもしれない。
1人の男が崖の先まで辿り着いた時にこの映画は終了する。

これ以上続けたって同じことの繰り返しを観客に見せるだけ、そう監督は判断したんだろうな。
この主人公のいる状況に浸った瞬間、もうその先なんてどうでも良かったんだ。
今その場にいるその瞬間の自分がエクスタシーだったんだから。




ということでファンタスティック部門最優秀賞は、ハイエナとミッドナイトアフターの2作に決定。

エンドロール入った瞬間に帰り出す何人もの観客の姿が面白かった。
確かにファンタスティック部門らしくないし、観客に求められてなかったのかもね。