鹿江光

ヴィジットの鹿江光のレビュー・感想・評価

ヴィジット(2015年製作の映画)
1.5
≪30点≫:「復活作」の先にある、限界の兆し。
なるほど。こいつぁひでぇ作品だ。今更こんな作品を見せて、我々は一体何に驚き、何に感心すればいいのだろうか。
シャマラン監督の復活作と評価されている本作だが、彼を異常に崇拝するほどのファンではない僕にとっては、とってもとっても平凡で、簡単に埋もれていくホラーの1つだ。
既に定番となったハンディカム視点で構成された本作は、とある兄弟が田舎に住む祖父母の家を訪問するところから始まる。この祖父母がまた何か仕出かしそうなオーラを放っていて、冒頭から安いホラーめいた雰囲気が感じ取れる。そんな予想を見事に裏切らず、話が進むにつれて、祖父母の奇怪な行動が露になっていくのだが……。
とにかく全体のテーマが雑なら、設定も雑で、いくらなんでも作り手の意図が全く滲み出てこない。「大学サークルがその場のノリで創ったホラー」のようで、だからこそ観終わった後も何も残らないし、中身もスッカラカン。どんでん返しなんて、期待するだけ損である。
とはいってもシャマラン監督には、『シックスセンス』や『サイン』に代表されるように、起承転結の物事を正面から描き、それを見事な伏線回収にカモフラージュして映し出す才能がある。少なくとも過去の作品には気持ちの良い衝撃があったし、「もう1回観ようかな」と思わせる魅力があった。
しかし今回の復活作は、そのカモフラージュもなければ、観客のミスリードを誘うような工夫もない。ただ勝手に観客が予想して、外れた何だで盛り上がるだけの作品。観方を変えれば、本作は「手の込んだ手抜き」で、観客をある程度泳がせておけば成立する、見事な省エネ映画と言える。
観客は見れば観るほどホラー作品への耐性が付いていき、結果的に愛だの情だの――副次的なテーマを借りないと表現できなくなってきた現代のホラー。もはや恐怖一本では勝負がしづらくなってきている。そんな中で、ファンや贔屓目を抜きにして、本当に評価されるホラー作品とは一体何か。現代の土俵でそういう作品に出会いたいとは思うが、未だその希望は叶いそうにない。
鹿江光

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