イマジンカイザー

シン・エヴァンゲリオン劇場版のイマジンカイザーのレビュー・感想・評価

5.0
物凄い急転直下のQを経て、精神的にもぎりぎりイッパイイッパイだった庵野監督。
シン・ゴジラの成功を経たとはいえ、エヴァという作品でどんな着地をするのか不安で不安でしようがなかったのですが、蓋を開けてみれば(既存作鑑賞者からすれば)多くの要素が懇切丁寧に拾われて、謎を残しつつもすっきりと終わっていてびっくり。これが今の庵野監督なのかあと驚くばかり。

シンジくん、あれだけ散々Qでいたぶられていて、どこをどうすれば予告映像のメンタルにまで回復するのか不安だったのですが、割と以前の予告通りで面食らったと言いますか。今まで安否が不明だったひとたちが入れ替わり立ち代わりで癒してくれて、びっくりするくらいやさしいせかいが広がっていて目を剥きましたとも。
直でシンジくんを説得・メンタルケアしてくれる人物たちのやり口がどれも別方向を向いていて、あれ鬱を患った人間から観ると合理的というか妙にリアルというか。地に足つけてゆっくりとシンジくんが『いま』に適合しようとしている姿は胸につまされるものがありました。

話の流れそのものは旧劇から劇的に変わったわけじゃないけれど、各種登場人物の想いがストレートに解るようになっていて呑み込みやすく、その行間にあるアクションはどれをとってもハイレベルでめっちゃくちゃ面白い。アニメだけでも、実写特撮だけでも出来ない部分の良いとこどりは、エヴァと言うか庵野監督だからできることなのかなあ。

なんだかんだ、言っていること自体は、旧劇の頃にあった『オタクは現実に帰れ』から然程動いてはいないんですよね、こちらでも。けれど、決意はしたけど前途多難なゴールだった旧劇に比べ、自ら他人の手を取って駆け出せるあのラスト。色んな意味で『卒業』を観客に迫りつつも、どこか温かみのあるエールに見えて本当に気持ちよく観られました。

いやあ、ほんとここまですっきりとした気持ちで観終われるとは思わなかったです。これまでの歴史に文字通りシンを通しての終劇。終わってみれば嘘偽りのない『さよなら、すべてのエヴァンゲリオン』。これを劇場で観ることが出来て、本当に良かった。

ありがとう、庵野監督。ありがとう、スタッフの皆々様方。