YukiSano

シン・エヴァンゲリオン劇場版のYukiSanoのレビュー・感想・評価

4.8
青春の卒業式。
エヴァと共に生きた青春が終わりを告げた。14歳の時に始まったアニメが幕を閉じた時に僕は40歳になっていた。

ただ、それだけのことなのに自分の青春が終わったことを理解した。

失望も絶望も包み込み、重複と反復を繰り返し、それでも前に進むと決意した覚悟がこれまでのエヴァになかったもの。

全てを壊し、再構築する。

エヴァの必要のない世界に来てしまった。

エヴァンゲリオンとは童貞を捨てる痛みを描いた物語だと僕は語ってきた。そして、それが見事に大人になる物語として終止符を打ったのだ。

あの頃、想い描いていた人とは別の人と結婚する。それを受け入れた時の寂しさと切なさと、それ以上の誇らしさが胸に去来する感覚。

自分だけが14歳のままで、友達だけ先に大人になって結婚してしまう。自分はいつまでも子どもで昔の好きな人を引きずっていたがようやく別の人と結婚することを受け入れた物語、のように思える。こじらせ男子が様々な社会的障壁とこれまでの恋を精算する。かつて好意を持った子に「好きだった」と教えてもらい、彼女は他の人のもとへ行った。

そこに辿り着くには父親と向き合い、過去の過ちの積算という痛みを超えて。

庵野監督は乗り越えたのだ。

シンゴジラを経て、ついに自分を認めたのだろう。

そして宮崎駿の後をも継いでいくかのような、ジブリイズム溢れる描写にまで辿り着いた。

ぼくらも大人になった。
シンジも大人になる。

当たり前のことなのに、こんなに誇らしくて胸が苦しいなんて。

あの頃、好きだった子はどんな母親になっているのだろう?

アスカやレイは今頃幸せなのだろうか?

そう願いつつ、僕は僕の人生を歩んでいく。

もうエヴァのいない世界で…

有り難う。すべてのエヴァンゲリオン。
YukiSano

YukiSano