シゲフジ

シン・エヴァンゲリオン劇場版のシゲフジのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

滅びかけても生産を続ける人の暮らし
シータに人間は「土から離れては生きられない」と言わせた駿の人間観が、深く庵野のなかに根を下ろしていた。「風立ちぬ」の収録でスタジオジブリに滞在し、その間にうつ病から回復していったことも影響しているだろう。

難解なストーリーの中で全プロットに通じるのが、苦しみの中でも逃げずに前へ進まなければならない(現実と向き合わなければならない)という、エヴァとしては意外な熱いテーマ。確かに「逃げちゃダメだ」って連呼してたけど。

何故前に進まなければいけないのか、大人は他者との関係や過去の行いの中で責任を引き受けるからだ。

その責任を同様に14歳の少年に押し付ける残酷な展開は、25年続いたストーリーの中で主人公を成長させ、そして遂に(大人たちの協力もあり)自分を含めた子供たちを解放した。

それは同時に、エヴァと共に人生を歩んできた私たちの解放でもあった。この難解な物語が、普遍的な(生活に根差した)メッセージと不完全な人類への愛に満ちた結末を迎えるとは。

エヴァンゲリオンという虚構は反対車線へ、主人公は映画をみた人たちと同じように現実へ。虚構の中で他者との関係の断絶を描いた過去のシリーズと対比される結末。

この大きな転換に、あるいは当時と今との監督の心境の変化に、内に閉じこもりがちだった庵野を連れ出してくれた嫁さん・安野モヨコをモデルにしてるといわれてるあのキャラが必要だったんだろう。

本作で庵野秀明という人間は極めて個人的な過去の克服を、かつてのエヴァンゲリオンを否定することで達成した。
心地の良い映画でした。
シゲフジ

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