かさい

シン・エヴァンゲリオン劇場版のかさいのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ラストシーンはキリスト教の世界観を押さえておくと楽しめるかもしれない。
神の被造物である人間は、神に食べるなと言われた「知恵の実」を食べてしまう。これが人類が初めて犯した罪、いわゆる原罪だ。この原罪は、神の子であるキリストが人類の代わりに処刑されることで贖われ、精算される(贖罪) 。キリストの処刑された場所が「ゴルゴタの丘」である。この時キリストを突き刺したと言われるのが「ロンギヌスの槍」だ。処刑後キリストは復活する。キリスト復活の場に居合わせたのが「マグダラのマリア」だ。彼女はキリストが処刑される場にも居合わせている。

映画のラストシーンを確認する。シンジは罪を贖うためにエヴァに乗り、マイナス宇宙へ突入する。行き着いた先は「ゴルゴタ・オブジェクト」だ。綾波ユイがシンジの代わりに初号機、13号機を「ガイウスの槍」で突き刺される。その後、シンジを「イスカリオテのマリア」ことマリが迎えにくる。
※「イスカリオテのユダ」は裏切り者の代名詞。マリがネルフとヴィレのどちらにも通じていたからなのだと考えられる。
書き換えられた世界で、シンジはマリと再開し幕が閉じる。

最後に、キリスト教と映画の違いを確認する。シンジはキリストのように槍に刺されず、母の綾波ユイが代わりにこれを引き受ける。ここが大きな違いだ。キリストの死で人類が得たのは贖罪だった。シンジが槍で刺されて世界が書き換えられれば、それは贖罪であっただろう。書き換えられた世界でも確かにシンジは存在するだろうが、マイナス宇宙のシンジは槍に刺されれて死んでしまう。書き換えられた世界のシンジは、たとえマイナス宇宙での記憶を引き継いでいても、全く別個の存在として成立することになる(要するにパラレルワールドです)
そのためユイはシンジの贖罪を引き受けることで、シンジをマイナス宇宙から現実世界へと送り返す。「ガイウスの槍」という物体は聖書には登場しない。ミサトの強い意志の力で生み出されたものだからだろうか。ロンギヌスの槍ではなく、ガイウスの槍で世界は書き換えられる。母が贖罪を引き受け、ミサトの意思の力を引き継いだ世界は、まるで現実のように生き生きと躍動する。シンジとマリは力一杯外へと駆け出す。

もう少しパラレルワールドを詳述したかったけど体力が厳しい。断念。
かさい

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