Hiroki

シン・エヴァンゲリオン劇場版のHirokiのレビュー・感想・評価

4.4
起承転“結”と思わせておいて、エヴァンゲリオンは庵野プロフェッショナル(『プロフェッショナル仕事の流儀〜庵野秀明スペシャル〜』)をもって無事に補完される。
今作シン・エヴァンゲリオンだけではまだ不足がある。

作品の捉え方についてたくさんの解説や考察サイトやレビューを見たけど、大方の人々が感じた事と私が感じた事は違っていた。特にラストシーンについて。
しかしそれはそれで良い気がする。
それは庵野秀明の頭の中にしかないので。
いやもしかしたら彼の頭の中にすらないのかもしれない。

わかってはいたけれど、改めて碇シンジというキャラクターは庵野秀明そのものなんだなー。
テレビシリーズから旧劇そして序破Qとめくるめくようにコロコロと変わっていくシンジの心模様や感情や雰囲気は、まるでその時の庵野秀明の心象風景を垣間見ているようだった。
新劇になって追加された設定“エヴァパイロットは大人になれない”。
26年経っても同じ事を繰り返していつの間にか周りから取り残される。
そんな自分自身。
「庵野さんはアンチに誹謗中傷されるのと同じくらい、ファンに“いつまででも待ってます”って言われるのが辛いんじゃないかな。」
右腕である鶴巻さんが庵野プロフェッショナルで話していた事。

もう一つ新劇から追加されたのは真希波マリというキャラクター。
正直Qまでなぜ彼女を追加したのか理由があまりわからなかった。
でも今作でしっかりわかりました。
マリは奥さんの安野モヨコだった。
テレビシリーズ&旧劇から新劇の間で庵野秀明自身に起きた変化。それは安野モヨコとの結婚。
彼が新しく物語をrebuildする(それもポジティブな方向へと)時に必要だった要素は安野モヨコだった。
一回考えるともーマリは安野モヨコにしか見えない。
てっきり捨て目の効かない私はシンジとアスカとレイの物語だと思っていました。
でもよく考えればレイ=ユイ=母親。
アスカは劇中で言っていた通り「好きだった」人。
絶望のまま未完で終わってしまったエヴァンゲリオンという物語を再構築するために、希望の存在としてマリが必要だった。
庵野秀明は最初から私とは全然違う所を見ていたんだね。
そう、この物語は壮大な壮大な妻へのラブレター。
アニメ界で、日本中で、いや世界中で、最も内向的で自己愛に満ち溢れた物語。
彼のために彼が描いた彼自身の物語。
それがエヴァンゲリオン。
私はそれをネガティヴだとは思わない。
庵野秀明という天才が人生の半分をかけ、死ぬほど苦悩して作り出したこの物語を受け取る事ができて幸せだった。
おそらくエヴァを追いかけてきた全員が思う結論。
この物語を受け取る事で庵野秀明をエヴァンゲリオンという呪縛から解放できる。

庵野秀明をはじめとする全スタッフ・関係者に大きな感謝と敬意を。

そして庵野プロフェッショナルの完全版がBSで、再放送が総合でそれぞれGWに放送されるみたいなので未視聴の方はぜひ補完してください。

さようなら全てのエヴァンゲリオン。

2021-45
Hiroki

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