Hiroki

パリ13区のHirokiのレビュー・感想・評価

パリ13区(2021年製作の映画)
3.6
カンヌコンペ予習なのでまずはカンヌ最新情報から行きます!
これまでの予習は最下部 #77thカンヌコンペ予習 から。

メリル・ストリープ(オープニング)とジョージ・ルーカス(クロージング)と共に名誉パルムドールが贈られたスタジオジブリ。
ジブリは折り返し地点での授与式になりました。
実は個人ではなくグループに名誉パルムドールが贈られるのは初めてとのこと。
今回は宮﨑吾朗が参加し、宮﨑駿&鈴木敏夫はビデオメッセージで相変わらず漫才のようなやり取りをしてました。(公式で公開されていたはず!)
しかしオスカーも含めてここまで映画賞みたいなモノに興味がない人たちもいないよなー。
宮﨑吾朗の口から「ジブリの歴史は世代交代に失敗した歴史」という言葉が出たのも印象的だった。
あまりに鈴木敏夫、高畑勲そして宮﨑駿という人たちは偉大すぎましたね...

フォトコールにはアウト・オブ・コンペに20年ぶりの監督作『Horizon, An American Saga』で招待されたケヴィン・コスナーが、今作でデビューとなる息子ヘイズ・ローガンを連れて登場。このヘイズ・ローガンが若き日のコスナーにそっくり!
この作品は名前からわかる通りシリーズモノでなんと4部作の1作目!そのためハリウッドが製作に及び腰で(そりゃそう!)自宅の1つを抵当に入れて製作費を捻出したとのこと。
まずは2部構成のPART1みたいですが。

ここまで低空飛行を続けていたコンペではコラリー・フォルジャ『The Substance』が高評価!やはりジュリア・デュクルノー味のあるボディホラーモノらしい。苦手かもー(笑)
続いてデヴィッド・クローネンバーグ『The Shrouds』は3分半、アリ・アッバシ『The Apprentice』は8分に及ぶスタンディングオベーションで、批評家の星取表もなかなか好調。
アリ・アッバシのレッドステップスには、黒・白・緑のドレスを纏ったケイト・ブランシェットが降臨。
これ階段(カーペット)の赤と合わせてパレスチナ国旗になるギミック。素晴らしい!


ではカンヌコンペ予習④のカンヌ常連の御大ジャック・オーディアールのお話に。
ちなみに今作は2021のカンヌコンペ作。
2024カンヌの大きなトピックスのひとつがフランス版のMeToo。
そしてその旧態然とした男性性の象徴的なフランスの映画人こそが、このジャック・オーディアールなのではないかと思う。
本人もそんな世の中の動きがわかってか否か、今作でフランスの若手女性クリエイター、特に女性性を描くことに特筆したセリーヌ・シアマとレア・ミシウスを共同脚本に招聘。
さらに原作が日系アメリカ人のエイドリアン・トミネのコミックで、主人公にチャイニーズとアフリカンを起用して多様性までカバー。
正直、自己保身のために免罪符をぶら下げて現代社会に目配せしているように感じてしまった。
全ての要素にあまり意味を感じない。
必要性を感じない。
こーやっとけば良いだろ感が強い。
原作を見ていないので何ともいえないが、3つの短編を併せて作ったらしいので、原作に忠実に作ったからというわけでもないだろう。

個人的にそんなに嫌悪するほどかといわれると別にそんなこともない。
ただ好きかといわれるとそんなこともない。
なんか下北とかを舞台にしたミニシアター系の映画にありそうなお話だなーと思った。完全にイメージだけど。
食べることに困るわけでもなく、自分の生きる意味とか繋がりとかを探していますという雰囲気を醸し出して、浮遊している記号みたいな人々。
そんな人たちにも苦悩や寂寞はあって。
もちろん私にも身に覚えがないわけではない。
でもみんな知らないフリをして蓋をして隣に習えするか、もしくはマイノリティを盾にして開き直るか。生きていくしかない。
そーいう意味ではこの物語の4人みたいに多少なりとも形になるのは、やはりフィクションの世界だなーと感じる。

あとフランス映画なのに全然官能的に感じない。甘美さがない。
女性性を描いていくのならその描き方もありだけど、ここまで濡れ場の多い映画でそれはちょっとどうなんだろう?
それ以外もカムガールのアンバー(ジェニー・ベス)だったり、カミーユ(マキタ・サンバ)の妹エポニーヌ(カミーユ・レオン=フュシアン)なんかの膨らみそうな要素があまり膨らまないで終わるのも消化不良感があってチグハグな印象。
短編を繋ぎ合わせたからなのか、オーディアールとセリーヌ・シアマ&レア・ミシウスの意思疎通がうまく取れてなかった感じなのか...

若くて素晴らしいクリエイターがたくさん出てきていることを考えると、72歳の御大オーディアールもなかなか厳しいかなーと最近思っていたんだけど、なんと今回のコンペ作『Emilia Perez』が批評家の星取表ではなかなか好評なことに失礼ながらびっくり!
今回はゾーイ・サルダナ、セレーナ・ゴメス出演の全編スペイン語でトランスジェンダーの大物ギャングのボスが性転換をするミュージカル作品とのこと。
えっ?どんな話?
いろんな意味で楽しみ!

2024-18
Hiroki

Hiroki