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アンナの出会いのtorumanのレビュー・感想・評価

アンナの出会い(1978年製作の映画)
4.0
シャンタル・アケルマン監督の『私、君、彼、彼女』から4年後の自伝的作品です。
今回は監督に専念し、オーロール・クレマンが彼女の分身となります。

映画監督のアンナが自作の売り込みに、ヨーロッパ各地を回る3日間のエピソードを描いています。
前回の自伝作品では、"部屋"から"屋外"へ出て行った彼女は、今回は"国"から"国"へと旅をします。

アケルマンの両親はユダヤ系ポーランド人で、祖母はアウシュビッツに連行され、母のみが生き延びたとの事。
作品の道程は、ドイツのエッセン〜ケルン〜ブリュッセル〜パリと、あたかも自分の父母や祖母の苦難の道をなぞるかのようです。

この道すがらに、5人の男女とのエピソードが絡んでいきます。
・アンナに求婚めいた告白をする小学生教師
・アンナの結婚を気にする叔母
・電車中でアンナを引っ掛けようとする男性
・アンナにバイセクシャルを告白されたアンナの母
・アンナが愛している男性との逢瀬

映画監督としての名声や、生活基盤も4年前とは大きく変わりましたが、人としてのアイデンティティや女性としての見られ方、これらの揺らぎを試すかのような出会いが与えたものは何でしょう。

冒頭のホームのシンメトリーな映像では、出口へ向かう乗客と1人電話ボックスに向かうアンナを映し出し、他の人を相容れない孤独ではあるが、彼女の強さが私には伺えました
ラスト、旅から帰ったアンナが留守番電話の内容を聞くシーン。
孤独と虚無感がぐっと押し寄せてきます。
アケルマン監督は母親の死後、後を追うように自殺をしています。
この作品を繰り返し観ることで、その所為が伺えるのかもしれません。
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