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ムーン・ウォーカーズのmOjakoのネタバレレビュー・内容・結末

ムーン・ウォーカーズ(2015年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

なんとこれも60年代が舞台。直近ではもちろん「コードネームU.N.C.L.E」(最近のスパイ映画はこの時代を意識せざるを得ない気もしますが)、夏はまさかの「ミニオンズ」がスウィンギンロンドンを舞台に大暴れしてましたし、その前はティムバートンが「ビックアイズ」で完成度の高い60年代のサンフランシスコを見せてくれましたしね。完全に今年の映画界の世界的潮流だと思うんですが、来年アカデミー賞がおそらく女性の地位向上やジェンダーを扱った作品が多くなるだろうと言われてるような社会的背景と今60年代カウンターカルチャーが無意識にせよ多く描かれることと関係あるのではと思ったり、思わなかったり。とにかく今作含めこの時代を扱った作品はどれも良作揃いだと思います。

ただ今回の作品は他の60年代を扱った作品と決定的に違うところもあると思って。要は2015年に60年代を描くとき大体の作品は60年代的なポップでオシャレな部分を誇張して描きますよね。ある種漂白された60年代であってそこが良い作品ももちろんある訳ですけど、今作はそうではなくて当時のロンドンヒッピー文化を出来るだけリアルに描くことが主眼だと思いました。平たく言えばドラッグ、セックス、ロックに浸かったオシャレとは程遠い若者文化ですよ。
演出も面白くてオープニングのアニメから心を掴まれ、中盤ロンパールマンがラリったところで主観ショットになるとことか最高でしたね。こうゆう狂ったビジョンを見る為に映画を見てるようなものなので。キューブリックのパロディ部分もまぁ普通に笑えました。ツラトゥストラとかは2001年オマージュとしてマストだとして、卑猥なテーブルは「時計仕掛けのオレンジ」かなぁとかそうゆう細かいとこで遊んでるのもまぁ楽しいですよね。
で、最大評価ポイントは何と言ってもキャスティングですね。特に主演のルパートグリント。ハリーポッターでは誰よりロンに感情移入してた身として他の2人に比べて注目されないのが歯痒かったので、今回完璧なハマり役で嬉しかったです。役としてはロンがそのまま大人になったようなヒヨったキャラなんですが、ドラッグやセックスや暴力が直接描かれる分周りに振り回されて狼狽える彼のコメディ演技は絶品でしたよ。一方でロンパールマンもいつも通り良くて、本気で怖い時と振り切っちゃってどうでも良くなった時のギャップは爆笑でした。キューブリックの替え玉やらされる彼も素晴らしかったし、ロンパールマンを誘惑するヒッピー美女も良かったですね。

音楽とかゴア描写とか褒めたいところは多いんです。とにかくこの手のブラックコメディが公開されるだけで嬉しいし、もうちょっと動員入ってもいいのになぁと思うくらいには楽しかったです。
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