柏エシディシ

ニーナ・シモン 魂の歌の柏エシディシのレビュー・感想・評価

ニーナ・シモン 魂の歌(2015年製作の映画)
3.0
これは良ドキュメンタリー。
サム・クックからの流れで気になっていたこちらも観たのだけれど、被写体への迫り方掘り下げ方がより大胆で深い。面白かった。
それでいて、原題の「何があったの?Missシモン」というタイトルからも感じられるニーナ・シモンに対する親密感、愛情と敬意もある。
登場する人物たちも、一人娘のリサや長年の演奏上のパートナーだったアル・シャックマンなど近しい人たちが多く、ニーナの光も影も忌憚無く語られている。
彼女達からこれだけの言葉たちを引き出した監督が見事、としか。他にも伝記ドキュメンタリーを手掛けている様で、そちらも観てみたい。

冒頭と劇中で印象的に使われるモントルージャズフェスティバルの映像がとにかく凄い。彼女の混乱と葛藤と、それでも歌い出した時のカリスマ性とを克明に記憶した忘れ得ない映像だ。

公民権運動の高まりと、自身の私生活における抑圧への抵抗のシンクロ二ティが彼女の作品をより高みに押し上げた事は皮肉でもあり、悲劇であっただろうし、その後の人生の大半を彼女の枷として苦しめた事には言葉も無い。
しかしそれでも彼女の残した素晴らしい楽曲たちは、未だに、いや今だからこそ力強く鳴り響く。
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