ケンヤム

団地のケンヤムのレビュー・感想・評価

団地(2015年製作の映画)
5.0
あの世とこの世の境界。
私たちは勝手に、肉体を持って生きているこの世界を「この世」と呼んで死後の世界を「あの世」呼んでいるけれど、あの世側からしてみたらこの世側があの世なのだから、あの世のことをあの世と呼んでこの世と分けるのはこの世側に住んでいる人間の傲慢だと思う。
というか、この映画を見て思わされた。
私は正直この映画に救われた。
なんか生きててもふわふわしてて、この世がリアルとは思えないこの感覚をこの映画にわかってもらえたような気がして。

この映画は、境界を乗り越えていく。
あの世とこの世の境界を、あのフィナーレで完全に乗り越える。
「未知との遭遇」はそれを描かなかった。
あの主人公は、天に昇ることでこの世から逃避したというだけだ。
この映画の夫婦二人はどうか。
逃避するわけでもなく、そこにとどまるわけでもなく、境界を乗り越え、そして曖昧にした。
彼らは境界そのものを概念として抽象化してしまったのだ。

そういうこの映画のメッセージ性に深く感動した。
「未知との遭遇」は「この世は私にとってリアルじゃない。あの世こそリアルなんだ」
という映画だったが、
この映画は「あの世もこの世もない。意識そのものがリアルなんだ。」
という映画だ。

意識というのは思考に他ならないし、思考の産物としてのフィクションに他ならない。
フィクションこそリアルなんだ。
リアルこそフィクションなんだ。
そこに境界線はないんだ。

乗り越えろ境界線を、
そしてまぜっかえせ!
ケンヤム

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