りょう

ポンヌフの恋人のりょうのレビュー・感想・評価

ポンヌフの恋人(1991年製作の映画)
5.0
 レオス・カラックス監督の「汚れた血」をレンタルビデオで観た衝撃さめやらぬころ、この作品は劇場公開の直後くらいでした。20代のころに何回観たことか…。
 久しぶりに観て、あの頃のように感動できるか不安でしたが、当時は自宅の小さなテレビ画面でしか観たことがなかったので、これまでにない映像の迫力に圧倒されました。オープニングのチェロの音色も最高です。
 ミシェルの過去などは謎のままで、彼女の真意がわからないところもありますが、あのラストシーンは、すべてを払拭するだけの多幸感があります。3部作の過去2作は、アレックスの片想いに悶絶するくらいに感情移入していたので、それがようやく…。当時のキャスト・スタッフやファンにも賛否あるらしいですが、Les Rita Mitsoukoの“Les Amants”が聴こえてくれば、めちゃくちゃポジティブな気分になるしかありません。
 主役はアレックスとミシェルですが、その2人以外にはホームレスのハンスくらいしか登場しません。この3人(ほぼ2人)だけでこんな物語を構築していることにあらためて驚かされます。ロケーションやポンヌフのセットの逸話は有名ですが、フランス革命200年祭の花火や水上スキーのシーンは圧巻だし、身体的にきわどいシーンもナチュラルに演じているジュリエット・ビノシュとドニ・ラヴァンの存在感がハンパないので、登場人物の物足りなさがありません。
 フランスの恋愛映画というジャンルになるので、女性のファンが多いのかもしれません。ただ、監督自身を投影したアレックス3部作は、大雑把に解釈すれば、なかなか成就しない男性の純粋な恋心を描いた物語なので、そういう経験のある男性にこそ相応しい作品です。50歳を過ぎても共感できたことが不思議とうれしくなりました。自分の感受性を確認するための映画として最適かもしれません。
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