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さようならのshigatakeshiのレビュー・感想・評価

さようなら(2015年製作の映画)
4.0
TIFFにて鑑賞、監督と主演女優のQ&Aセッション付きでラッキー。

すばらしい!!とてもよかった。期待していたものとかなり違って、きっちり、映像詩。いろいろ言いたいので、ダラダラ書きます。

まず、企画。最近気になってしょうがない、平田オリザ氏のアンドロイド演劇『さようなら』の映画化。コミュニケーション論を得意とする同氏の壮大な実験。敢えて、人間っぽいものを舞台に持ち込んで、戯曲を成立させる手腕に魂が震える。あと、不条理な展開の物語を成立させる天然な女優さんって存在するけど、だいたいそれはコメディでの文脈での話。シリアスなものに、アンドロイドとは、公式的には一緒かもしれないけど、返す返すも、その状況下で戯曲を成立させる手腕に、魂が震える。

そして、圧倒的なな描写。監督自ら、コメントされていましたが、あまりクローズアップを使わない主義らしく、引きの長回しで、ある特定人物に感情移入というよりも、登場人物の関係性を俯瞰で見れるような配慮をしているのだという。結果、ある特定人物の感情とい言うよりも、なんでこういう設定なんだろうとか、なんでここでこの詩の引用なんだろうとか、そういうことに考えが飛ぶので、そこに何故かアンドロイドがいるっていうことを、常に考えさせられるし、企画の根本にものすごくマッチした表現方法を多様する監督を見事に起用したと感じた。

んで、設定。原発のことを入れ込んでいるので、それありきなのかとおもいきや、「終焉」を表現するために、女性の孤独死をテーマに決め、あくまでその環境の一部として原発で崩壊した村と設定になったようで、そこの押し付け感はまったくなく、変な政治的なメッセージも入り込む隙間もなく、ニュートラルに鑑賞できて物語の内部に入りやすくてよかったと思う。

会場から音について、質問があり、そのこだわりにに監督が答えていたが、全編ものすごく静かなので、ちょっとした風の音や寝息など、耳に入ってっきます。録音にはかなり苦労されたそうです。ロケ地も普通の村落なので、普通に車とか通るようで。あと、人がいない空間の音というのも録音しなくてはいけないらしく、福島の立ち入り禁止区域などで許可をとって録音したようです。特に小さい音だけで、シーンが構成されるようなところでは、息を止めている自分が居て、物語にすごく集中していたのを感じた。

生と死についていろんなこと考えさせられます。一回で、すべてを受け取り切れない、何度でも読み返したくなる小説というより哲学書っぽい感じのないようでした。一般公開時に、ぜひまた劇場に足を運びたいと思います。
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