こえ

さようならのこえのレビュー・感想・評価

さようなら(2015年製作の映画)
3.7
原発事故。詳しくは語られないけれど、放射能に汚染されたこの国の国民は、海外に避難することになったようだ。でもそれには優先順位があって、外国人であるターニャは5ヶ月経ってもまだ出られないでいる。他にも前科のある者や、いわゆる在日も同じく。おおまかにいって、反核と反差別のメッセージがある。時代的には近未来なのか現代なのか、曖昧。
そして、ターニャには世話役のアンドロイド「レオナ」がいる。彼氏もいる。近所(?)の友達の中年女もいる。若いカップルとも出会う。
この状況で想定される、悲劇的な人間関係の出来事がだいたい描かれる。
見ていてつらいし、もちろん映画は終始暗い。結末もハッピーエンドではない。アンドロイドという存在もそれを際立たせている。メッセージ性を考えたら、そうなるのかもしれない。ただ、そこに救いを見出すとしたら、やはり「竹の花」なのかな。数百年に一度しか咲かないという竹の花に意味を付けようと思えば、いくらでもできるかもしれないけど、しかしそれは何の意味もなく咲くというところに、映画としての救いがあるのだと思いたい。
美しい花がある。花の美しさというようなものはない。
一つの国をだめにしてしまうような人間の行いを批判しつつ、それでもあり続ける「美」というもの。それが見えれば、この映画も観てよかったと思えるかもしれない。
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