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私は好奇心の強い女 イエロー篇のyのレビュー・感想・評価

4.3
有り体に言うとビッチという単語が相応しいスウェーデンの演劇学生のレナは、演出家に甘い声で枕を持ち掛ける。「女優と関係を持つと監督の目が曇る」というベルイマンの(本当に言ったかどうか分からないが・・)言葉が引用されていた。本作はその監督×女優コンビによる劇中劇的な側面と、レナという女性自身の物語の側面がある。ヴィルゴット・シェーマンというのは本作を撮っている監督だが、彼の本名で演じている作中の出演者としての監督でもある。彼自身、ベルイマンに師事したということもあり、非常に優れた映画を撮る。
街中でレナがその無知さゆえの純粋さからくる正義でもって、能力主義、階級社会、性差や兵役の是非など政治的なトピックについて取材して回るが、気付いたら組合に、フランコ政権で独裁制を敷くスペインへの旅行者に、労働大臣にとスケールが徐々にアップしていく。突然の「カバンの中身は何だろな」クイズには面食らって爆笑した。キング牧師を勝手に登場させるやりたい放題っぷり。
アメリカでのレイティング制導入以前の“ポルノ映画”(監督はそう呼ばれることを嫌がったようだが)として上映禁止にもなったことが有名で、過激なイメージが先行する本作だが、日本のロマンポルノ等の方がよっぽど過激で、政治的な主張の方が作品の骨組みになっている。決してエロ映画と唾棄してよい作品ではない。
面白さという意味では、橋の欄干の上で跳ねながら身を寄せ合っての騎乗位、池の中でちゃぷちゃぷ、木の上でゆらゆらと、印象的なシーンが沢山ある。冒頭とエンディングで第四の壁を越えた宣伝を入れるだけではない、現実と虚構入り乱れる、入れ子映画の傑作。
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