くり

マーシュランドのくりのレビュー・感想・評価

マーシュランド(2014年製作の映画)
4.3
これはなかなか深い映画。
物語が進むにつれ、観ているこちらもどんどん沼の深みにハマっていく感じ。まさにタイトルそのもの。

捜査過程で当たり前のように暴力を振るう警察官、証言と引換に見返りを求める貧しい市民、金欲しさに麻薬売買に手を染める被害者の父親等々、ここに登場する誰もが正しさを欠いている。

そしてこの映画、ラストの解釈がある程度観客に委ねられているタイプの作品である。彼が事件に関与しているのか否か。映画内に散りばめられている様々な事柄が、前者なら伏線になるし後者ならミスリードになるという意地悪な仕掛け。更にそれによって、「もう事件は解決したろ?」というセリフの"恐ろしさの意味合い"が変わるマジック。

そういった楽しみ方もできるけど、この映画は当時のスペインを、そして現代社会を揶揄する作品として一級品だと思う。ラストがどうであれこの社会はまだ暴力や貧困が蔓延る湿地帯の深みからは抜け出せていないというメッセージ。
間違いなく傑作。
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