あさずきとうか

ライチ☆光クラブのあさずきとうかのレビュー・感想・評価

ライチ☆光クラブ(2016年製作の映画)
3.7
内面的、外面的な違いこそあれど、“大人への成長”という大きな流れが様々な思惑を生み、統一されていた思想に不均衡な状態を作り出してしまいました。
全ての歯車を狂わせ物語を加速度的に崩壊へと導いた元凶は、少女カノンでもなく、ロボットのライチでもなく、裏切った者でもありません。
大人と子供が半々に混ざりあう“14歳”という年齢だったのではないでしょうか。

ただ小さな地下組織のままひっそりと終焉を迎えたことは、ある意味メンバーにとっては幸せなこと。
理想郷は理想のままでいることがもっとも美しい姿なのですから。


不満だったのはBGMが多用されることです。

この物語は低所得の労働者階級が暮らす工業地帯が舞台。
明日への希望が見えない底辺の世界です。
だからこそゼラは汚れ荒んだ大人を蔑み、そこから這い出ようとする精神が狂気を後押ししています。
活気があってはいけない世界観なのに、安易に盛り上げる音楽を入れるのはどうなんでしょう。

僕が原作の漫画を読んでいて一番印象深かったシーンは、数々の残酷な描写よりも、静まり返った月夜に響く「ゴウン ゴウン ゴウン」の音でした。
根底で蠢く憎悪の成り立ちを思うと、あえて盛り上げない勇気も必要だったのではないかなと僕は感じます。