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永い言い訳のRingRingLoveのレビュー・感想・評価

永い言い訳(2016年製作の映画)
3.8
鬼才・西川美和監督作品
あいかわらず観る者の感情のひだを丁寧に揺さぶる良作に仕上がっていました
是枝監督の秘蔵っ子として名高い西川監督ですが、個人的には西川監督のほうがより、善悪では測れない「人間の感情の曖昧さ」を表現するのに長けたかただと思います

妻が望むような夫に夫が成長したときには、もう妻はこの世にいない
まるで現代の「雨月物語」のような主題ですが、この夫のすごいところは、なくしてから大切だったことに気付くのではなく、大切なものがなくなったことにすら気付くことができなかった、というところ
それがこの物語を面白くしていて、吐き出しようのないやるせなさと、じんわりと染みいるような感動を最後に与えてくれる気がします

監督本人の著による原作は、直木賞候補になった際にすでに読了していたのですが、できれば原作を未読の状態で先に映画を観たかった
原作を知ってしまっているが故に映画特有の「間」を読む楽しみが損なわれてしまったのが残念でした

あと個人的には作中、小学生の国語の問題にレイ・ブラッドベリの「バビロン行きの夜行列車」の引用を用いていたあたり、監督のセンスの良さにもにやりとしてしまいました
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