豚肉丸

湖畔の2年間の豚肉丸のレビュー・感想・評価

湖畔の2年間(2011年製作の映画)
4.2
社会と断絶したような湖畔で自給自足で生活するおじさんのお話

一切説明もナレーションもセリフも無いまま映画が始まり、これがドキュメンタリーなのかフィクションなのかすらも判然とせず曖昧な印象を残したまま映画は終わる。映画は始まりから終わりまで、常に老人の男の日常生活を捉え続ける。起きてからトイレに行き、シャワーを浴び、作業をし、ボートに乗って湖を漂う。それら一つ一つの動作を、荒いモノクロの質感の映像で映し出される。誰かと何かを会話する訳でもなければ、そもそもこの映画で老人の男以外の人間が登場することもない。本当に淡々と老人の生活を映し出すのみ。しかし動作の一つ一つを捉えたショットは映像的に良く、彼がボートで漂う場面を長回しで捉えたショットは印象的。
合間に老人の過去が窺えるような写真が挟まれるも、それらが物語の役割を果たす訳でもない。しかし、ある一枚の写真によって、これまで平面的でしかなかった老人の人生に重厚感が生まれ、その瞬間が素晴らしい。

焚き火の炎と共にフェードアウトしていく老人の顔。決して面白い映画ではないが、写真の演出とこのあまりにも綺麗な終わり方によってなんか良い感じの綺麗で儚い雰囲気を纏った映画に仕上がっていて良かった。
『Krabi, 2562』の共同監督の作品と聞いて確かに納得。
豚肉丸

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