ひろくん

ディストラクション・ベイビーズのひろくんのレビュー・感想・評価

5.0
すべてがアホらしくなった。主人公の振るう暴力は法秩序や相手を否定して自らを完全に肯定する。負けたら勝つまで、勝ったら次へ。つまり、最強。こんな圧倒的な勝利を見せられて正気でいられるわけがなくない?今まで人間が積み上げてきた秩序だったり関係だったりを破壊、ディストラクションしてしまう新しいコミュニケーションの確立。実際、主人公は暴力によって、常にコミュニケーションし続けていた。人間と向き合っていた。殴った拳から血が出るし、殴られれば顔を腫らし鼻は潰れる。殴ったって傷ついて、殴られたって傷つく。それは自分にも相手にも「当事者」だっていうことを強く自覚させる。SNSの描写が示していたように要はみんな、他人事なんだと思う。世の中、見て見ぬふりが溢れすぎているんだよ。悪いやつとかヤバいやつとかに限った話じゃなくて、日常のコミュニケーションだって円滑が第一、平和が第一で、そういう世の中に鬱憤があるから、自分に忠実に、嘘のない暴力で勝つまで殴る。ああいう自分の気持ちにクソ正直な姿に不快感は誰が見ても感じられないはず。だからもう、なんか全部アホらしくなったよね。俺たちって、道化だよね。今、楽しいのか?って。
劇中で、喧嘩御輿と主人公の暴力が対比されていたが、やっぱり主人公の暴力はまったく法外のところ(捕まってないし警察も殺したし)にある神の儀式っていうことなのかな。暴力がすべてを破壊する、そして暴力が言語になり秩序となる。っていう流れ、これは神話だったのかもしれないな。意思の疎通(暴力が国語)ができないところや、暴力にすべてを見出だし他の何にも興味のない悟った様子、干渉もせず、なぜか菅田を見放さないのも神的だったような気がする。
あとは、小松菜奈の体に触れたいと思いました。それに、はじめてかわいいなと思った。たぶん、彼女が今まで、人を騙したり、トんでる不気味な悪女役が多かったから、まあ、今回も嘘をつく悪女だけど、それにしても、暴力の前に本当に恐怖して身動きも取れなくなって涙して、夏のトランクに放置されて水を渇望する、今までのお返しに怒りを爆発させて感情のまま罵倒する、そういう役だったっていうことだよな。女は弱ってなんぼ、泣いてなんぼ。
ベストムービーも検討。
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