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ヒトラーの忘れもののmayaのレビュー・感想・評価

ヒトラーの忘れもの(2015年製作の映画)
4.0
何度も息を止めてしまうほど緊迫したシーンが続き、劇場内には瞬きを赦されないような雰囲気が漂っていた。目を背けたくても背けられない。手に汗を握り、耳を塞ぎたい気持ちを抑えて恐怖心と戦った101分。観終えた頃には憔悴し、力が抜けたと同時に「映画館で観て良かった…」と深々と感じた。

「終われば帰れる」と「国に帰ったら何をしたい?」と未来に希望を抱きながら話す少年達に対して、地雷もデンマークの将校も容赦はない。バックに広がる白く美しい砂浜もその白さが段々と残酷な色に見えてくる。
指揮をとる軍曹の心理描写については、抑えめではあったけど、少年達と過ごす日々を通じて次第に父親のような気持ちが表れ出たり、憎しみや叩き込まれた使命感で罵倒したりと、葛藤が痛いほど伝わってきた。ラストシーンについてはきっと賛否両論なんだろうな。このテーマで描く上でどうなのかな…と思うし、これは軍曹をヒーロー化する映画でもないし。

場内は年齢層高め。20〜30代らしき人は少なく、隣のおじいさんに「一人で観にきたの?」と驚かれる始末。同世代にもっと観てほしい。そして「忘れもの」という邦題はやっぱり受け付けない。そんな手緩い粗略な言葉であらわせるものじゃないでしょう。
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