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素晴らしきかな、人生のevergla00のレビュー・感想・評価

素晴らしきかな、人生(2016年製作の映画)
3.0
【喪失の美】

他作品未鑑賞。

人生の "why" には、必ず "love," "time," "death" のいずれかが関係する。
それが宣伝の鍵だと社員に豪語する広告会社重役Howardですが、6歳の愛娘を失ってからは、仕事はおろか日常生活もままならず、会社経営の雲行きも怪しくなります。

その彼を、純粋に友として同僚が支えていくのかと思いきや…、会社の命運のために、彼の心神喪失と責任能力及び判断能力の欠如を客観的に証明するための計画でした。このシビアな作戦は、予告編から得たイメージと乖離していました。精神的に立ち直れない上司を会社存続のために見限るという現実的で残酷な目標に向かって、ついでに社員の心の問題を解決しようと、ファンタジー級に都合良く事が運びます。

売れない舞台俳優3人が、それぞれ "love," "time," "death" を擬人化して演じることになるのですが、各俳優を指導する会社同僚が、丁度そのテーマの問題を抱えていました。Howardの課題は、それら3つのテーマの集大成と呼べそうですが、どちらかというとオムニバス風で、有名俳優を多数起用することにより、どのエピソードも突出しない印象です。

舞台俳優達が、即興で放つ(という設定の)台詞が核心を突いていて凄すぎるのですが、そのひとつひとつはとても響くものがありました。ドミノを組み立てるのは大変で時間もかかる。けれど倒すのは一瞬で、全て崩れると分かっていながら、その崩れていく様に魅力を感じ、最後の牌が倒れるまで目が離せない。
ドミノのように儚く、喪って気付く人生の美しさ。そこへ到達するには相当の人生経験を要しそうです。映画よりも小説向きのお話だと思いました。
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