山岸

バッドボーイズ フォー・ライフの山岸のレビュー・感想・評価

4.8
ウィル・スミス自らプロデューサーに入り再起動したシリーズ。

今までのシリーズにない悲壮感のある演技と、「俺たちが街を守らないでどうする」などのセリフの端々から想像するに、どうやらウィル・スミスは「一生バッドボーイズ」、つまりアクション映画というジャンルを背負っていくつもりらしい。
反射的に「なぜお前が……?」という問いも湧くが、果たして観終わると、筋肉スターブームには間に合わず、アメコミヒーロー映画には早すぎた彼なりの映画愛に納得させられたのである。

物語は徹底して「再生」と「誕生」のモチーフを繰り返して進む。
新たな命が生まれ、マーカスとマイクは文字通り生まれ変わり、メキシコの「死者の日」の呪いにより蘇った過去の呪縛と戦っていくことになる。

再生のためには必然的に、主要人物が退場していくことになる。
こう考えると、マイケル・ベイが監督から降り、去っていくのも合点がいく。
シリーズを続けていくには、血を流し、新しい血を入れていくことが不可欠だ。
アクション映画華やかなりし90年代的価値観の極点とも言える「バッドボーイズ2」の呪縛から逃れ、現代にフィットする新しい視点を持った監督を迎え入れたのは必然であり、その試みは大成功と言っていいだろう。
同窓会ファン・ムービー「エクスペンダブルズ」シリーズにはない、フレッシュな現役感がここにはある。
過去に囚われた、郷愁を誘う二次創作としてではなく、本気で最前線に立とうという気概に満ち満ちているのだ。

おじいちゃん刑事の二人は、価値観の合わない若い捜査官たちに化石扱いされながらも、当然のごとく共闘していく。
対する敵の目的は、華やかな過去を持つセレブ、マイク(=ウィル・スミス)の名声を地に落とすこと……しかし"息子ほど年の離れた"この敵もまた、血の呪縛に囚われ、過去を呪うことによって生きながらえる身であるのが明らかになっていく。
それを"魂の共感"によって開放していく……これは自らジャンルの救世主たらんとする、ウィル・スミスの高らかな宣言だ。

大傑作!!
山岸

山岸