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ザ・ギフトのJIZEのレビュー・感想・評価

ザ・ギフト(2015年製作の映画)
4.0
新居で幸福な生活を送る夫婦の前に同級生を名乗る不審な男が現れた事から贈り物が次々と届き始める不可解な謎に迫るエスカレート型心理ミステリ映画。
原題は『The Gift(=贈り物)』。由来の通り訪問者(高校の同級生)から手紙,赤リボン付きワインボトル,鯉のエサ,地獄の黙示録(DVD)…など"一方通行な友情"が過剰にエスカレートしていくサイコチックな展開を取っていた。二度目を見返すと恐怖な作品。
物語の前半ではジョエル・エドガートン演づるゴードと呼ばれる内気で不気味な訪問者と標的となった円満な夫婦との静寂で神妙な交流が描かれる。後半ではゴードが執拗に一家へギフトを贈り続ける目的(核心)が毒牙を向き因果の報いを経て間接的に夫婦へ襲い掛かる。前半と後半による緩急の隔て方は善人と悪人の立場が移行し考えさせられる深い題材だった。
ジェイソン・ブラムが製作を務めた事を汲み取れば非常に上質な天罰が下る系サスペンス映画でした。血飛沫やゴアで恐怖をデフォルメし震撼させる部類の映画ではなく"ゴードの過去(人生の破滅)"がシナリオの起因を為し主人公夫婦の焦点がボヤける立場の逆転,報復と謝罪(和解),永遠に続く復讐など視点が前半から後半で移行するプロセスはゴードの立場を汲み取れば悔やみ切れず唸る。
鑑賞前後で作品の印象はガラッと一変し人生を狂わされた男のダークヒーロー映画とも取れる作品。家庭を持つような大人になっても内面の成長を果たせない男の反省映画でもあり話が悪い方向へ進み度に不幸が連鎖し出す先の読めなさは作品の持ち味に感じた。
無邪気で幼稚思考を併せ持つゴードの「お前が過去を忘れても,過去はお前を忘れない…」という中盤で登場する台詞。憎悪や悲哀を背負った辛辣な彼だからこそ胸に突き刺さる場面であろう。
夫婦が勝手に他人の家中を捜索する流れや薬(精神安定剤)を服用する場面など正義と悪の比率を五分五分に散らし最後まで事の善悪を押し付けなかったのが作品の一貫性を読み取れよい。
あと妻役のレベッカ・ホールがアン・ハサウェイの冴えない二流版に感じたのは自分だけだろうか。。ゴードが猿の面を被り悪戯する光景も学園ヒエラルキーを嘲笑うかのよう揶揄したように受け取れた。
人を弄んだ人間が人に弄ばれる人間の黒い過去が露になる映画です。最終的に訪問者のゴードとは一体何者であり何が目的なのか?夫婦に迫る真意は?最後のギフトの中身は?など贈り続けられるギフトが示す上質ミステリを是非堪能してもらいたい。
JIZE

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