垂直落下式サミング

劇場版 艦これの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

劇場版 艦これ(2016年製作の映画)
4.1
人気ブラウザゲーム『艦隊これくしょん-艦これ-』のテレビアニメの続編となる劇場版。南方海域の強力な深海棲艦にお馴染みの艦娘たちが立ち向かう。
本作は評判の振るわないTVシリーズの続編として、アニメ版なりに艦娘というものの定義を誠実に描いてみせている。アニメで描かれた仲間の死のさらにその先、彼女たちが生きる世界の殺伐へと踏み込んだ物語は血生臭い雰囲気を孕みながら展開し、艦娘達がなんのために戦い時に海の底へ沈んでいくのかを、敵である深海棲艦とのコインの裏表のような輪廻転生の関係性を提示した上で、彼女たちが存在する理由を相対化してみせている興味深い内容であります。
劇場版だけあって戦闘シーンや睦月ちゃんが咽び泣く場面には力が入っており、対峙する両艦隊の主砲から放たれる弾幕の着弾音も心地好く腹に響く。重巡洋艦姉妹や時津風をはじめテレビアニメでは出番のなかった子たちの活躍も見られて概ね満足だ。
今回の作戦海域アイアンボトム・サウンドはソロモン海戦など先の大戦でも激戦が繰り広げられた場所で、ゲーム内でも多くの提督達の精神を蝕んだと聞き及ぶ魔の海域。という事で、強力な敵艦隊を前に仲間たちが力及ばす死にまくる展開を予想していたが、案外優勢に戦局が進んでいったので安心した。
敵との対話によって戦いの落とし所を探ろうとする反戦を思わせるような展開も見所。でも旧日本帝国軍の兵器を女の子に擬人化している時点で、反戦がどうのこうのなんてのは正直うるせえ主張だ。相手が誰だろうと容赦なくぶち殺せばいいとは思う。
キャラクターへの深い理解を感じる描写が増えたのも好印象。『艦隊これくしょん』は第三者の二次的創作から盛り上がってきたメディア作品なわけで、その作品世界を構成するのは今日のネットやコミケ文化によって派生した膨大な創作による多様な解釈の集積であり、公式非公式問わず誰がどんなものを世に出したところで、それは『艦これ』という巨大なムーヴメントの一側面に過ぎない。ならば本作のダークでシリアスな物語をも許容するに余りあるほどの広い土壌は既に築かれているのだ。
テレビアニメ版に対する私の不満も海の底に撃ち沈めてくれるような素敵なファンムービーでした。
じんつーお姉ちゃんが強キャラで癒し系だったのでよかったです。