享楽

マグニフィセント・セブンの享楽のレビュー・感想・評価

マグニフィセント・セブン(2016年製作の映画)
4.3
今作の原案である「荒野の七人」を観たので、それを踏まえて諸々と書く。黒澤明「七人の侍」は未観。
「荒野の七人」と大筋は同じだった。すなわち、冷酷非道な資本家に小さな街の住人達が搾取され、保安官や神父は実質有能に機能せず、街の勇気ある1人が勇者に助けを乞い、彼が野郎どもを集め悪を成敗しに行くという判りやすい勧善懲悪物の西部劇。
今作は60年代に撮影された荒野の七人とは違い、圧倒的な映像美であるが、古典的な西部劇映画での技法をそこまで削ぎ落としているわけではないように見られた。
例えばデイゼル・ワシントン演じるチザムがゆったりと荒野で馬を進めている際の熱気ゆえのボカし具合だとか、酒屋に入り賞金首であることを隠して店主をやっている人間に詰め寄るシーンの、フィルムノワール的な陰影の付け方だとかがそれに当たる。
散在されたフェティッシュの対象物…良いですね。ドライな地で輝く黒光りした馬や銀の輝きを放つ銃など…。
荒野の七人における七人は、誰しも出自が不明で似たり寄ったりの、こういう言い方は良くないかもしれないが—行き場のない彷徨ガンマン達だったが、今作における七人は、各人歴史性を具えており、この纏まりに多くの観客がアメリカの多種民族性を感じ取ったでしょう。(イ・ビョンホン演じる上海出身の暗殺者が当時この地に辿り着く余地があるのかという無知な疑問もあるが…)
イーサン・ホーク演じるグッドナイトのトラウマの描写が、遠回しでむやみに回想シーンを用いたりしつこすごないところが良かった。争いに対してトラウマの苦悩を用いるのは常套手段ではあるが、くどすぎると個人主義的なイデオロギーを感じてしまうためエンタメ性が希薄になるなぁと最近は個人的に思っている。
もうあのガンマン達、ウエスタンは過去へ過去へと遠退いてしまうのでしょうかね…などと、考える大人達がいそうである。
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