Reno

バービーのRenoのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.9
フェミニズムの内外、縦横多方面の葛藤と癒しを描きつつ、奇抜と万人向けも両立させた不思議な映画!

ダイバーシティの可視化とステレオタイプの解体による、あらゆる層へのエンパワーメントが必要とされ、やっとエンタメ業界がそれに応え始めた先で、今作は、そんなインクルージョンとリベラルな考え方が浸透しつつある社会をスタートラインにし、かつてステレオタイプや社会的強者としてもてはやされた人達 + ダイバースな社会とYou can be anythingを当然と学んだけれど、だからこそ自分は何をなせたのかと悩み、自分の価値を見出せなくなってしまった人達の葛藤を描いた作品。

フェミニストの奮闘の先、その歩みに必ずついて回る苦労所である「バックラッシュへの対抗」を描き、さらに、社会をより良くしようとするムーブメントの中で推進する側の一員として自分が相応しいのか分からなくなってしまうという重要な葛藤にフォーカスした作品でもあり、その2つをポップでキャッチーな「バービー」という形で、幅広い層に届けてくれたガーウィグ監督や主演かつプロデューサーのMargot達に感謝を感じました!

私は、日本社会で生きている、セクシャルマイノリティかつフェミニストかつZ世代かつリベラルだと自認していますが、だからこそ自分はそこの中で相応しい人間になれているのか自信が持てなくなる時が、ここ数年多々ありました。同世代や年下の中にも素晴らしい発信をしてくれる人達がいて、その人達が先導してくれて嬉しいけど、自分はその人達のまいた種を無駄にしているんじゃないかと劣等感を抱く気持ちがあって、近いものがこの作品にあったなと。

もちろん、それは何もそういう堅苦しい捉え方に限らず、ただ普通に、自分は結局何になれたのか、なれるのかというよくある普遍的な悩みとも被っていてみんなが共感しやすいトピックでもあったと思います!

そして、日頃の社会情勢を見ていても、バックラッシュというのは非常に身近で危険な問題だと感じているので、こう皮肉たっぷりに、ビッグなサマームービーが扱って周知してくれるのはとても頼もしいところ。日本語字幕では男社会と訳されていたPatriarchy=家父長制というワード、何度も出てきますが、この夏、今作を通してその問題を考えてくれる日本人が増えてくれたら良いなと願っています!

★その他感想★
・ポスターの時点で思ってたけど、サーシャ役アリアナ・グリーンプラットがとっても可愛かった!

・ビリー・アイリッシュの書き下ろし曲「What was I Made For?」の使い方がとっても良い余韻を残してくれる!

・グレタは来年公開のディズニー実写『白雪姫』の脚本にも参加しているということで、こっちも期待できる!!

・不意なザック・スナイダー版ジャスティスリーグいじりが良い!笑笑 ワーナーやるね笑笑
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