このレビューはネタバレを含みます
パステルカラーととにかくピンクがあらゆるところに使われている“バービーランド”。
バービーたちは職業や特技、夢を持っていてそれぞれ個性的だが、ケンはただの“ケン“。
バービーはかかとが浮いていて、飲み物や食べ物は作り物。食べるアクションはするけど実際には食べられない。
バービーたちは日々仕事やパーティーで充実しているけど、ケンたちはバービーがいないときどうしているのか。
ある日“死”について考えたふつうのバービーは、足がべた足に、太ももにはセルライト、と大事件。人間界に行って今まで通りの日常を取り戻そうとする。
人間界は夢見た世界とは大違い。女性は影を潜め、男性が中心。バービーを作るマテル社も、ほとんどが男性というありさま。
社長室付きの秘書の女性との出会いで“バービー”の世界が変わっていく。。
男社会のあり方をケンが持ち帰ったことで、バービーランドは大変なことに。最終的にはこれまでのバービーランドのあり方を取り戻しつつ、ケンたちも望む役割を得て働けるように変化を受け入れていく。
これが現実世界での男社会の中での女性の立場(もう少し進んでいるところもあれば、そうでないところもあるだろう)。
それだけで終わっていたら普通の映画どまりかもしれないが、“ふつうのバービー”は人間になる道を選び、自分の望む生き方を探してひとり立ちする。
ビリーアイリッシュの歌をバックに、バービーは誰の望みでもなく、自分で選んで歩み始める。
誰もが、誰かに示された道ではなく、自分の歩みたいように生きていいんだとエンパワメントしてくれる素晴らしい作品だった。
★笑ったシーン
・変わったバービーの家にいる犬がフンをしながら通過するところ
・ケンたちの戦いのシーン全体(特に途中から和解してライアン・ゴズリングケンとシム・リウケンを中心にしたダンスに切り替わるところ)
・ゴズリングケンの「なぬ」
・美しくないと言っているが、マーゴット・ロビーなので説得力がないというナレーション
・男社会と馬が実は関係ないことに気づいて冷めてた(馬好きすぎやないか)
その他
・冒頭の赤ちゃんの人形を派手に破壊する女の子たち、“母親”というジェンダーロールを幼い頃から刷り込まれることへの怒りだったのだろうか。
・ラスト、婦人科を受診するのは人間界に来てつるぺたでなくなったかを確認するため?
・自己認識の欠如が争いの元。
なんとなーく流されて生きていやしないか?と考えさせられる。
グレタ・ガーヴィグ最高なのだった。