グシケン

バービーのグシケンのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
3.5
バービーランドの実写化のクオリティは、予告を見たときの期待どおりで、視覚的満足度は最高だった(Dolbyシネマ鑑賞)。
バービーランドや登場人物のビジュアルの作り込みが素晴らしいのは言わずもがなで、ケンとか車が吹っ飛ぶシーンやバービーランドと人間界を行き来するシーンなどで使われてた雑にも見えるアニメーションは、人形(が動く)世界を現に見ているような没入感を得るのにとても効果的な演出だったと思う。
他方で、ストーリーはちょっとどういう視点で観るべきなのか悩ましい内容だった。
本作は、ジェンダーの視点に限らず、○○ってこうあるべきだというステレオタイプに囚われないで自分らしく生きていこうぜっていうのが最大のメッセージとしてある。それを一番無個性な定番バービーと添え物扱いのケンが紆余曲折を経て自己のアイデンティティを確立していく過程で伝えようとしていたように思う。それ自体は、無機質なものを擬人化した主人公のストーリーではありがちな内容だけど面白い。
でも、その紆余曲折を描く中で、あそこまで徹底してジェンダーギャップに言及する必要があったのかものすごく疑問だった。しかも、男性優位社会の象徴として出てくる人間界が、20〜30年以上前の価値観を基に描かれたような感じで、今このテイストでやる意味ある?という印象だった。
バービーランドも、今作では男性優位社会と同列で批判されてるように感じるのも違和感があった。バービーの歴史とか流行った時代背景とかよく知らないから見当違いかもしれないけど、かつて男性の職業とされていたあらゆる職業の格好をしたバービーたちが暮らすバービーランドは、おそらく女性の社会進出黎明期に女性にとっての理想郷としてイメージされたものだと思う。それ自体が男女格差が減少した今の時代に合っていなかったり、理想の女性像の押し付けであったりとの批判はできるだろうけど、バービーランドをテーマに選択して映画作るなら、バービーランドの社会構造を是正するような切り口で展開するのはいかがなものか(本作のバービーランドは映画化に向けて再構築された世界観なのかもしれないけど)。本来のバービーランドの価値観の枠内で作ればよくない?とどうしても思ってしまう。というか、自分はそれを期待していた。
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