バービーとケンの関係性に着目し、バービーランドとリアルワールドを行き来することで、男性目線、女性目線各々からみた"居心地の悪さ"を観てる側にも体験させる構図に驚いた。ジェンダーをテーマにした作品は多くあるが、そういった作品は女性目線から語られることが多いため、男性側、特にケンの視点に時間を割いていることが特徴的だと思った。
リアルワールドで男性優位の世界を知ったケンがバービーワールドでも同様の構造を実現しようとしてバービーとの対立することになっいく。しかしそこで、どちらの世界がより良いかを押しつけるわけはなく、ありのままの自分で良い、という方向に持ってくる結論づけは、非常に現代らしい。また、ルッキズムや消費主義を助長したともされるバービーの成仏・再定義でもあるとも感じた。
アランという１種類しかないケンの友人の役も登場するが、このアランは後半バービーの味方をする独特な存在。"バービー"、"ケン"に二分されない立場の象徴のようにも感じた。
内容抜きにしても、バービーランドを再現したピンクの世界は見ているだけで楽しい。バービー自体には疎いが、実際の商品に忠実に美術セットが組まれたのだろうことが想像できる。また、バービーらしさの象徴として、かかとが上がっていることに注目しているのも秀逸だった。
