ゆういち

アイリッシュマンのゆういちのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
3.9
『俺への道は一本でいい』
『ここにいる』

MCU批判騒動では個人的に色々思うところがあったマーティンスコセッシ監督の最新作。
とはいえスコセッシ監督でロバートデニーロ、アルパチーノ、ジョーペシ。
映画業界を引っ張ってきたベテランギャング役者たちの集大成とも言える作品。
望まぬ結果とはいえ、Netflix作品となった今作は配信映画のレベルを一気に押し上げるおもしろさ。
3時間30分あるのに飽きることなく引き込まれる魅力がたっぷり。

この映画の良さとしてまず素晴らしいのはキャスト。
監督含め主要キャスト全員が70代後半の大ベテランで圧倒的な存在感を放っている。
ジョーペシなんかは50回以上オファーを断ってるとか。びっくり。
(ちなみにそのジョーペシだけなんかシワ具合がCGぽくてややかわいい)

次にそのキャストだからこそできる"人生とその終わり"を描いた物語。
『人は歳をとらないと時間の速さに気づかない』
劇中のセリフにもあるけど人生はあっという間。
だからこそ良い事ではないけど人の命も奪ってでも娘との関係に溝が出来てでも全力で生きてきた実在の男達。
危険と隣り合わせな組織の中で生きる彼らにとって幸せはなんだろう。
演じるキャストたちがそれぞれ話す言葉に重みが感じられる。

また、今作が多額の資金を調達する必要に駆られた要因でもあるインダストリアル ライト&マジックと呼ばれる特殊技術によってデニーロらの若い姿をリアルに表現している点も見どころだと思う。

長い人生の終盤。
あれだけ豪快に生きてきたフランクが仲間を失い、家族を失い、ドアを開けておいてくれと願う。
無言の間、遠い目。
落ちぶれた姿で思うのは自分を受け入れ名誉をくれたジミーなのだろうか。
見事すぎる演技。
人生を駆け抜けたおじさま達の青春と終焉はなんだか物悲しくもある。
ゆういち

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