のぞみ

ノクターナル・アニマルズののぞみのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
5.0
凄くいい…
まずは監督、脚本がトムフォード
今作で2作目らしいけれど流石の一言。
脱線すると18F/Wのコレクションもとても良かった。
スパンコール、パイソンやゼブラ柄のアイテム他
、蛍光色等自分を見ろと言わんばかりの己への自信に満ち溢れた女を80's風のアイテムでトレンドに則り見事表現することに成功している。
19s/sのショーも非常に楽しみ。
映画に話のベクトルを戻すと、
作中の衣装。トムフォードのアイテムは一切出てこない。
アリアンヌ・フィリップスが衣装デザインを手掛けており、他様々なブランドの服が登場する。
スーザンの母はシャネルのスーツに首元には大ぶりの真珠のネックレスで階級の高さを表現し、キュレーターはギャルソンのvintageハーネスにガレス ピューのレザーアイテムを合わせて着る芸術を表現している。
スーザンの衣装も冒頭、仕事や自分への厳格さという鎧を身にまとったかのようなドレスとネックレス。
中盤の親子の重要なシーン。母が白に対し、黒で対比させることで後々のスタイル(外側には暗めの色、中は白)が、外側は母親を否定してはいるが、本質的にまたは結果的に母親と同じ様になってしまった。ことを表現しているかのように感じる。
目立つファーコートに夜。これはまさしくノクターナル・アニマルズ(夜の獣)と言える。
最後の胸元が大胆でセクシーなドレスは急に緑色とここまでに無い目を惹く色味が登場し、エドワードとの再会に力を入れつつ、リップを落としたりなど過去の自分(エドワードに愛されていた自分)を演じようとするなどの矛盾さがもう終わってしまっている関係を表現しているかのようだった。

映画の作りが非常に緻密精巧だと感じていて、送られてきた小説によって物語が展開されていく。
この発想が面白い。手紙やビデオなんかは良く見るが、直接本人の言葉として伝えるのではなく間接的に伝えるという手法を取っていることで、私たちに幾多幾万の解釈を許している。
作中度々登場するヒントもミスリードなのかそうではないのか。
それは愛なのか、復讐なのか。
そしてあのラスト。
答えというか、製作者側の意図は既に明言されているが、それも1解釈にすぎない。
各々の解釈を楽しむ、若しくは考え続けることができる数少ない映画である。



またこの映画に関しては冒頭のシーンへの言及は免れないだろう。
あれはルシアン・フロイドの非常に有名な裸婦絵画のオマージュで、彼の祖父が精神分析医だそう。調べたところ、送られてきた小説がエドワードの精神性を表しているというミスリードだと見た。
これは個人的な解釈にはなるが、あれはスーザンの逆説的表現で、太った女性が腰を振り笑顔で、時には挑発的な表情で踊っている姿は、悲しい目を浮かべ旦那との関係は冷え切り、隷属的なスーザンとは真逆だ。踊っている女性達のスクリーンが巨大なのは後悔の念が強い事を表しているのではないか。
他にもオブジェが登場するが、あれは精神的に病んでおり、また抱える問題に対して積極性は無く寧ろ見ないフリをしているスーザンのように見える。
踊っている映像が2次元なのにたいして、オブジェと3次元なのは表現方法の違いがあるからだと思う。スクリーンは2次元として逆説的で精神面を。オブジェは3次元として直接的で現状を。
なのかと思う。

長くなったがこの映画は芸術的側面、映像、ストーリー的側面共に深く、考えれば考えるほど、調べれば調べるほど面白みが増してくる。
オープンラストでなんかよく分からなかった、で終わるのでは無く考え、調べ、自分の解釈を得る事を強くオススメする。
のぞみ

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