まっと

ノクターナル・アニマルズのまっとのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
4.0
エドワードからの復讐とは思えなかった。
これはひとつの正解を求めて観るような映画ではないが、敢えて復讐という言葉を使うならば、それは小説からの復讐だろう。

スーザンが小説に感情移入して眠れなかったり、娘が死体と同じ姿勢で寝ていたり、幻覚を見たりしたのは、知らないうちに、小説の世界が現実に侵食してきてしまったためだ。

小説にはそういう、読む人に思いがけない影響を与え、現実に侵食してゆく力がある。善い方向にも悪い方向にも。

それはアートにしても同じこと。
観るひとにとってそれぞれ作用も意味も違うし、時に両義的でもある。

Revengeと書いてある絵だから復讐だという短絡的なものではない。それでは絵ではなくて、ただの看板だ。そんな眼で絵を見るとき、iPhoneの映像の中に幻覚が現れる。

ラスト、エドワードが現れなかったのは、私的妄想で言うと、あれはエドワードが既に何らかのアクシデントで死んでしまっているから。

スーザンはたぶんその事実を知った時に、自分が小説の主人公をエドワードにして読んでいたせいだと慄くに違いない。
そして、自分が舐めていた、小説やアートの持つ恐るべき力に気付くに違いない。
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