森崎

20センチュリー・ウーマンの森崎のレビュー・感想・評価

20センチュリー・ウーマン(2016年製作の映画)
2.5
もし、鞄に入れていた読みかけの本が中まで染み込んだ雨に濡れて読めなくなったとして、「あんまり面白くなかったから別にいいか」と思うのか「残念、鞄に入れるくらいには興味持って読めてたのに」と思うのかみたいな。人は時に手に入らなかったものや失ったものを思うとき、自らにとってのそれの価値を下げることで痛みを和らげようとする。その一方でそれがあった瞬間は確かに楽しいものだったと受け止めたりもする。

個人的にはあまり全編通して乗れなかった、山もそんなにないし。でも、憎むべき人もいない、どの瞬間もしょうもないなんてこともない、皆が悩みながら個を持ちしっかりと生きようとした愛すべき過去の出来事として語られた二時間はとても優しかった。冒頭で愛車が炎上し廃車になったことに対しての母親の言葉とか、互いに掛け合う言葉や目線も。
その場の最善策ではなく好きで選んだものならば、過ぎた思い出だってけなすんじゃなくいつまでも愛せますように。
森崎

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