ざきつー

20センチュリー・ウーマンのざきつーのレビュー・感想・評価

20センチュリー・ウーマン(2016年製作の映画)
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突き刺さるというより、パンにスープを染み込ませていくように、少しずつ心に熱と柔らかさをもたらしてくれる作品でした

映画体験をしたなあ、って思います

フランシス・ハを先日鑑賞しまして、グレタガーヴィグのファンになっちゃったところに、何気なくレンタルショップの新作欄見たら彼女がいるんだもの
これは運命に違いないと思って意気揚々と借りたわけなんですが、これが本当、導かれたとしか思えないくらいいい作品でした

ゆったり進んでいて波風の激しくない内容なんですけど、その情報量とメッセージ性はめちゃめちゃ詰められていてですね、一回だけじゃ満足に吸収しきれないです

各々のキャラクターが愛おしいし、共感できるし、もう抱きしめたくてしかたないんですよ

よくこれを2時間程度で収め切ったなあと心底感心しました
監督のこと知らなかったんですけどいやあ素晴らしい方です

すきなセリフがたくさんありました
女性に何か聞かれたら言葉少なにミステリアスな表情して答える
セックスさせるつもりのない女の子を隣で寝かせちゃダメ、自身がなくなる
あなたの考える私でしょ、それは私じゃない
書ききれませんね


母親はどんどん理解できなくなる息子に手を焼いているんですよ
主人公は母親なんていなくても平気だなんて言うんです
万国共通なんですよね、この感覚
学ぼうとすることを 刺激が強すぎる と止めようとする親心も、色んなことに関心を持って試して見たくなる少年心も、あーすげえわかるなあと思いながら見てました
互いが互いを理解しようと近づかんとする姿勢もすごく愛おしい
最後の車の窓を持ってスケボーで並走するシーンに親子間の全てがあるように感じました
相互理解というのはひとつのテーマでしょう

母親のタバコを吸う場面が多かったですね
どういう意図なのかはともかく、そのスタイルがすごく洗練されていてカッコよかったなあ
軟弱野郎の音楽を聴いて楽しそうに躍る姿もよかったし、現代を触れようとライブハウスに行くのもよかった
幸せかなんて考えたら鬱になるってのも、彼女の立場で言うと重たいものがあります

主人公はなんだろうな、思春期の息子て感じで、フツーな、特別感がないのがよかった
色んな人物と話して影響受けたりわかったような口を聞いたり、らしさ がありましたね

やっと仲介役なしで話す気になった?
私と同じようになってほしくないの、幸せになってほしいのよ
お母さんがいれば大丈夫だよ

この流れはあまりにも鮮やかでした
直後の母親の顔がまたいいんですよ

幼馴染のエルファニング
いやすっかり大人びていてびっくりしちゃったなってのはともかく、まあとにかくキレイでしたね
隣に寝ていて手を出すなってあまりにも酷なことですなあ
関係性を壊したくないからセックスはしないってのはよくわかりますけど、それを17歳で言えちゃうあたりすごいです
読み取りが甘いんだけれど、彼女は自分の家族がいやなんですよね
そんで、ありがちなちょっと悪いこと、タバコを吸ってみたりお酒飲んだり、あるいは背伸びしてセックスを知ったような気になる
でもオーガズムを感じたことがないって言っていたのは、本当の愛情をまだ知れていないってことかな
少女性と女性性の両面をきっちり演じていたように思います
このバランスがすごいですよね

そしてそしてグレタガーヴィグ!
相変わらずの肩幅!広い!すき!
赤い髪でパンクな外見、でも中身は繊細です
主人公に1番影響を与えていたのは彼女かもしれませんね
女についての勉強は僕にとってもタメになりました
子供を産めないかもと宣告されひどく傷ついている彼女に主人公の母親の言ったセリフがよかった
しかも最後にオチまでつけてるし
たぶん彼女はずーっと悩んでいったんでしょう
自分なりの答えを模索しながらなんとかここから這い出ようと
だから最後に子供が生まれたことがわかったとき、救われたような気分になって嬉しかったですね
音楽をかけて主人公とはちゃめちゃに躍る場面がすきです

中年男性の彼はですね、残念なことにあまり印象に残ってないんですよ
いい役どころだとは思ったんですけど、少年パートばかり見やっていて、母親パートのほうを少し油断していたんですよね
関係を持った女性とその後どうしていいのかわからないなんて言っていましたね
ライブハウスで主人公の母親にキスをして、どういう意味と問われたとき、彼は答えに窮します
そんなキスをしてはダメとたしなめられるわけですが、きっと彼はわからなかったんじゃないでしょうか
寡黙で頼りなげな感じが映画のテイストにすごく馴染んでいました

そんな感じで、なんだかまとまっているのかそうでないのがわからない彼らが屋根の下で食事をするわけです
それがとても おかしみ があるなって思ったんですよね
ヘンテコが感じがとてもいい

ところどころ入る早送りのような演出と、ドライブシーンで輪郭が三原色ぽくわかれる演出は面白かったです
雰囲気を損なわない程度の遊び心

今後見返す作品になるでしょうし、その度に発見をもたらしてくれるように思います
ざきつー

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