ポルノ映画を映写機で鑑賞していた金持ち家族が見た女優を目撃して我が家である古城に連れてきたことから彼らの異常性を徐々に炙り出し、突如挿入される謎のショットの数々や発言がジグソーパズルの様に一つに結び付いて終盤の展開へと繋がっていく流れに唸らされるストーリーは古城を捉えたアーティスティックな映像も相まってとてもポルノとは思えず、こんなものをエロ目的で見に来たお客さんはビックリしただろうなと想像する。
父親と息子を誘惑する女優らしきヒロインの謎めいた雰囲気とポーカーフェイスっぷりが難解なドラマとよく合っていた、そして彼らの関係から除外されていたはずの母親がヒロインと触れあうことでぼやけていた真実がつまびらかになっていく語り口も見事。
映写機を通して世界が変貌していくラストが圧巻、そしてあの結末は人によって解釈が違ってくるはず。個人的にはあれは『荒野のダッチワイフ』や『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』に近いものを感じた。
辞書の文字が大量に貼られた床がある書庫でのやりとりはATG映画みたいで印象に残る。そして普通のドラマの映像が突然逆回しになり、何者かがこれを映画として見ているような感覚に陥る場面が怖い。