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ルームのmichikoのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
4.0
2008年オーストリアにて発生した監禁事件「フリッツル事件」。監禁された女性と犯人との間に出来た子供の壮絶な監禁生活とそこからの脱出。その実話を基に描かれた小説『部屋』を映像化。
同じく「フリッツル事件」を映像化した『ガール・イン・ザ・ベースメント』という映画もあるが、監禁中の性暴力とそこからの脱出をサスペンスホラーとして描いたソレとは異なり、本作では脱出後の母親と子供の精神的な解放、社会復帰までを丁寧に描く。そう、彼らの心は脱出後も囚われたままであり、長い長い苦しみはまだ終わっていなかったのである。

あくまで小説を基にしており、実際の事件から大きく変わっている点も多く事件のリアルさで言うと『ガール・イン・ザ・ベースメント』に軍配が上がるしれない。しかし本作では事件によって壊された家族の姿、そして犯人逮捕では解決出来ない心の傷の修復を描く事で、事件の重大性をもう一段階押し上げて、上辺だけでない事件の本質を描く。

主演のブリー・ラーソンの強さもさることながら、その子供の演技も素晴らしく、我々は彼に何度も助けられる。ストーリー展開を知っているにも関わらず、感動させられた。

※実際の「フリッツル事件」は本作よりもより凄惨である。監禁場所は納谷では無く監禁を知らない犯人家族が住む一軒家の地下であり、監禁期間は7年ではなく24年、出産した子供も1人ではなく7人、そして犯人は見ず知らずの男性ではなく、実の父親である。
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