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ルームのryoのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
4.2
わずか5歳の男の子ジャック。
この子にとって、TVの中の住人・卵の殻で作ったヘビ・トイレットペーパーの芯で作った迷路・椅子1号2号・ベッドやクローゼット、これらがとても小さな"へや"の中にすべて詰まっている。ここしかない。その中にママと自分の2人だけ。
こんな小さな世界で2人きりだったからこそ、2人の愛に余計なものはなく危うい。
自分には親というものがわからなくても、"世界"に出るまでの2人の過ごす時間をみて感動した。


ジャックが宇宙だと思っていた外側に出てからは、小さな世界で2人きりだった危うさが彼らを変化させる。
世界を知らなかった子どもは戸惑いながらもプラスチックのように柔軟に成長していく。しかし知っていた世界、願っていたはずの幸せな世界にでた母親は、埋まらない心の傷や家族との時間に苦悩し続ける。

誘拐されまともな精神でいられない時、それが望まれぬ形で生まれた子でも、守るものができた母親としての強さがどれだけ自分を支えたか。
それがわかっていても、記者の「なぜ息子だけでも外に出してもらわなかったのか、それが最良の選択だったか?」という言葉は、とてもジョイの心に深く突き刺さったのだと思った。


血がたとえ繋がっていなくても、娘とその息子を愛し寄り添おうとする、父親であろうとする優しいレオ。
孫の姿を見るたびに、娘の悲惨な事件を思い出さなければいけない祖父にとって、それは生き地獄だったと思う。
一切話してくれなかった孫に「バァバ大好き」と言われた祖母の喜びも計り知れない。

ジャックが初めて空を見た瞬間の画と、みんなにグッバイするラストシーンがとても印象的で好きでした。
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