Erectlick513

ルームのErectlick513のレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
4.2
人にとっての内と外を描いたお話、だと思う。観た後に、作中の内容を振り返りながら、あれこれと連想してしまう作品。子は鎹、という古い言い回しが似合う話だなと思った。

内容自体は、とある男に監禁された女性と その間に生まれた監禁部屋以外の世界を体感した事のない男の子の脱出と、その後が描かれている。
...かといって悲運な、またはドロドロしたヒューマンドラマでは決して無い。

様々な焦点の当て方が出来る話だと思うけど、暗澹とした母の葛藤も、出生を知った男の子の苦悩も、世間との軋轢に奮闘する母子も、それほど濃く描かれては無いと思う。あるのだけど、節々にポツリと置かれる程度に感じる。

これは、目線があくまで男の子に寄り添っていて、この子のお話だからだと思う。周りの大人達は、その目から映っている。この子にとって大事な主題は目まぐるしく変化する環境で自分の「内と外」を掴んでいく事で、これが作品の芯なんだなと感じた。その姿が賢かったり、純粋だったり、逞しかったり、健気だったり。観終わるまでその姿に惹きつけられる。

母も家族もその他含めて、大人達は既に「内と外」を掴み取って各々の自己形成が済んでいる。対して男の子にとっては全てが初めてで、どれも曖昧である。おかげで大人より柔軟に自分の世界を掴んでいく。その様が見せ方含めて素晴らしかった。

作品の終盤、この子の掴んだ新しい「内」に母が受け入れられたというか招き入れられたと感じるシーンがあって、とてもジンワリくる。
なにも「内と外」は自分と他人を隔てるだけのものではなく、大事な人と内で寄り添うことも出来るというか。

観て1日目の書きなぐりだけれど、忘れないうちに。
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