555

ルームの555のレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
3.9
17歳の頃に見知らぬ男に誘拐され、以後7年間監禁されていた女性と、その監禁期間中に産んだ5歳の息子の話。

前半は監禁生活を重苦しく映す一方で、母子の2人きりの生活は笑いもあることを教えてくれます。5歳になった息子に、母はいよいよこの世界について隠していたことを教え、脱出を図ります。世界は母と時々来る怖いおじさんとこの部屋だけだと思っていた息子はなかなか受け入れられない。でも母の強い思いを受け、決死の思いで監禁生活から脱出するのです。

監禁生活を強いられていたことは本当に辛いことで可哀想。ただ、保護された後の生活を普通に過ごせるかというともちろんそうではない。
お母さんと違って、息子は生まれた時からあの小さな部屋と母親が全てだった。だから、外の世界の大きさに戸惑います。可哀想なのか、ただもしかすると他者の影響下に置かれた生活のほうが、息子にとっては辛いようにも感じます。
母はなにより息子を愛してますが、記者からの世論の一意見について問われ、自分が息子に与えた環境に後悔が押し寄せ、精神的に不安定になります。
世界の常識を当てはめられた瞬間からこの親子の新しい苦悩が始まります。
見ていて色々考えさせられます。

話はめちゃくちゃ変わりますが、私は宇多田ヒカルの曲が好きなのですが、あなたという曲にこんな歌詞があります。
「戦争の始まりを知らせる放送も アクティビストの足音も届かないこの部屋にいたい もう少し 」
愛し合う親子にとって、一番なのはもしかするとほかの誰からの意見も影響も受けない世界なのかもしれません。できれば2人きりでいたい。しかし、もちろんそうとは生きていけない。だから、どんなに恐ろしくても外の世界に行かなければいけない。
監禁生活を強いられていた息子にとって、外の世界はいかほどに怖く感じたことか。それでも彼は言うのです、「でも大丈夫だよ」
題材は特殊ですが、狭い部屋から、広い世界を考えさせられた作品でした。
息子役の子、天才すぎます。
555

555