福福吉吉

帰ってきたヒトラーの福福吉吉のレビュー・感想・評価

帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)
3.5
◆あらすじ◆
1945年に亡くなったはずのアドルフ・ヒトラーが2014年のベルリンにタイムスリップして蘇った。現代のドイツの姿に戸惑う彼であったが、テレビ番組スタッフのザヴァツキにモノマネ芸人と勘違いされて、テレビ番組に出演させられる。ヒトラーは現状のドイツの情報を取得し、その問題点を真面目に指摘していく。ヒトラーの言動はTVで大人気になっていくが...。

◆感想◆
ストーリーとして「アドルフ・ヒトラーが現代に生きていたら」という一点に絞った作品なのでとても分かりやすく、ヒトラー自身は至って真面目なのに周囲が勝手に笑ってしまうという流れが良い意味でくだらなくて面白いです。

ヒトラー(オリヴァー・マスッチ)は物事の本質を見抜く力に長けており、そのズバズバと指摘していくことで人気を獲得していくのですが、移民問題など繊細な事象に対してかなり際どい発言をする姿は危なさもありながらその国に住む人の本音の部分を突いている感じがして、うっかり同調しそうになりました。

一方、テレビ番組スタッフのザヴァツキ(ファビアン・ブッシュ)はテレビ局を解雇され、再びテレビ局で働くため、ヒトラーを発見してテレビ局に売り込みます。ザヴァツキは母親に生活を支えられていて、非常に頼りなく、自身の意見を持っていない人物で、ヒトラー頼みで生きていく姿はとても情けなく感じました。

ヒトラーがテレビで人気を得ていくうちに、彼の政治的な野望が動き出します。それでも周囲はずっとヒトラーのそっくりさんという扱いをし続け、そっくりさんのまま、大衆の意見を集約させていきます。結局、大衆がヒトラーを選び始める流れが皮肉的で怖く面白かったです。

毒気の強い作品ですが、なかなか面白かったです。大衆を操って自分を選択させる第二のヒトラーが生まれる可能性があることを感じさせるものでただのコメディで終わらない作品でした。

鑑賞日:2023年11月27日
鑑賞方法:BS松竹東急
(録画日:2022年12月6日)
福福吉吉

福福吉吉