yk

パーティで女の子に話しかけるにはのykのレビュー・感想・評価

4.0
ぶっ飛んでいて、サイコー!
全く新しい世界のラブコメかつ熱いパンク映画だった。

この映画で定義されているパンクは、観客の顔をベロベロ舐めたり、跳ねすぎて天井を壊すようなただの「暴」ではなく、「真の自由を求めて既存の体制をぶち壊すこと」。

ザンが所属するコロニーのモットーは「個性の尊重」だけれど、その実、他人への慈しみはなく、尊重という名ばかりの檻に囲われている。そこからザンを連れ出すのが、内気だがパンクな精神を持つエンというのがまた良い。
これは今の世の中にも言えることだと思う。
過度な尊重はむしろ重さとなって、人を絡めとってしまうし、それを打破するのはまだ見ぬ世界に飛び込むザンやエンのような勇気と反発心である。

次第にザン達が宇宙人だという事に気づいていくエン達だが、監督のインタビューや原作小説にもあるように、ザンを宇宙人としてみるよりは、異性の人間とは「想像していたものとは全く違う、異世界に住む人のよう」であると捉えた方が良いように僕は思った。
実際、女性が何を考えてるか分かった試しはないし、足で鼻を触られるかの様な「何これ…」という感覚を味わったことも無いではない。でも、女性から見ても同じなんだろうな。


この映画のもう一つの軸は、「家庭を持つ」ということ。
何度も流産したパンク界のボスは、「母」としてザンのためにアパートに乗り込む。
「父」に捨てられたと感じているエン。
PTに食べられる「子」であるザン。

けれど最後、ザンはそういったしがらみを全部断ち切って、愛を持ってエンから離れていく。それは、母になるためであり、子を慈しむためであり、同時に出ていったエンの父とも対比出来る。
そして、現地のパンクを学び、慣習やしがらみを消し去ったザンは、愛(ハート)を持つ新しいコロニーの行き先として地球に戻ってくる。
ここでも、エンの父とは異なる未来が提示されている。

球体に腰を打ち付けていたウィルスやライヴ中のキス、警官の口に髪をねじ込む子供に象徴されるように、ザンにパンクの因子を感染させたエン。そしてその経験はコミックになり、更にパンクを感染させていく。
彼が1度もザンを宇宙人として扱わなかったところに、パンクと愛の絶妙なバランスが見えた。
人を愛する、というのは、そういうことだと拙い文章に乗せて思う。
yk

yk