たく

ジョン・F・ドノヴァンの死と生のたくのレビュー・感想・評価

4.0
若手人気俳優と少年の長年にわたる密かな文通の真相を追っていく話で、暗い内容かと思ったら最後ジーンとくる人間賛歌になってたね。

学校でいじめに遭ってるルパートと、ゲイを隠して生きてるドノヴァンがそれぞれ抱える孤独から互いの存在が救いになってる感じで、自分のことを分かってくれない母親との激しい口喧嘩が同じドラン監督の「マイ・マザー」を思わせた。
大人になったルパートが当時のことを記事にするためのインタビューを受けながら回想シーンとして話を繋いでいく作りになってて、最初は上から目線で彼にさらさら興味がなかった女記者が、彼との議論を通じて自分の偏見に気付かされていく展開が良かった。生きるということは偽りない真実の自分を出すことだってことで、本作もドラン監督らしく性の葛藤がテーマの底にある。

グザヴィエ・ドラン初の英語作品で、今まで観た作品よりポップさを感じた。
顔のアップにピントのボケた背景という独特な構図が多用されてて、特にドノヴァンが心情を告白するシーンの爺さんのドアップは強烈。
音楽も良く、中盤でドノヴァンがキレるまでをずーっと途切れずにリズムを刻んで緊迫感を盛り立てていく弦楽のBGMがウェス・アンダーソンぽくて秀逸だった。
たく

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